Sho.S* COLD EMPEROR -The World of Ice- (ページ9)

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何も知らない子犬のように。3 ページ9

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″好きな食べ物は？″

″嫌いな食べ物は？″

″いくつ？″

″休日は、どんなことしてるの？″

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彼の口から出てくるのは、

身辺調査みたいな質問ばかりで。

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「何の仕事してるの？」

「えっと・・・」

「ん？」

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″普通の、会社員です、″

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つないだ手に力を少しだけ入れて答えたら、

そうなんだ、と彼が私を見下ろして笑った。

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「櫻井さんは？」

「ん？それってさ、制服あるの？」

「制服はない、かな・・・」

「へぇ、じゃぁいつもこんな服？」

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私の声が、聞こえないように。

ことごとく、彼への質問は、

無視される。

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「そう、ですね。」

「そうなんだ(笑)」

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口許を緩めた彼は、

やっぱり私を見下ろして笑う。

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「Aちゃん、モテるでしょう？」

「そんなこと、ないです・・・」

「モテる人ってね、一環して謙遜するんだよ(笑)」

「・・・じゃぁ、櫻井さんは？」

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彼を見上げると、

口許の笑顔が、す、と消えた。

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「あ・・・ごめんなさ、」

「えぇ？なんでー(笑)？」

「や、なんか・・・怒ってる、から？」

「怒ってないよ(笑)」

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目の奥が笑ってない。

口許だけ上げられた笑顔に、

背筋が凍りつく。

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「じゃーぁー、あと聞いてないのなんだ？」

「・・・」

「あぁ、誕生日！誕生日いつ？」

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頭の中が、真っ白になる。

自分の誕生日さえ、思いだせなくて。

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「えぇ？忘れちゃった？」

「っえ、」

「はは、可愛いな(笑)」

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甘やかすような、その言葉に。

答えなきゃ、答えなきゃ、

無意識のうちに、何かが私を急かす。

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「っと、1月！」

「ん？」

「1月、25日・・・です。」

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咄嗟に、出たそれは。

実家で飼っている、犬の誕生日で。

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「っへぇ・・・そうなんだ。」

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幾分、戸惑ったようなその声に。

″どうしたんですか″とか、

″櫻井さんの誕生日はいつですか、″とか

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そんなこと、聞ける勇気なんて、

これっぽっちも持ち合わせてなくて。

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ただ、繋がれた手に引かれるまま、

彼の後を、ついて行った。

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