Sho.S* COLD EMPEROR -The World of Ice- (ページ8)

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何も知らない子犬のように。2 ページ8

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「Aちゃん、トマト嫌いなの？」

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最初に出されたサラダの、

赤い野菜をどかして食べていたら、

目の前に座っている彼が、眉を下げた。

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「ばれました、か？」

「バレましたね(笑)だってそんなあからさまに(笑)」

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ふふ、と笑って、

食べ終わったお皿の上から、

フォークを取って、

私のお皿に手を伸ばす。

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「だからだ、アボカドのピザ頼んでたの、」

「・・・」

「ふふ、かわいいなぁ、」

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刺さったトマトは、

彼の大きな口に運ばれて、

ぱくん、と姿を消した。

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「アボカドは好きなの？」

「アボカトは好きです、」

「そうなんだ、」

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もぐもぐ、と口を動かして、

水を口に含んだ彼が、

無意識なのか、前髪を触る。

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「他には？」

「え？」

「他に、嫌いなものとかないの？」

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他、に・・・

けれど、思い当たるものはなくて、

首を傾げたら、

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「ないんだ(笑)」

「ない、です。」

「そっか、」

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″それ、可愛いね、″

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指を差されたのは、

私の耳で。

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動くとゆらゆら、と揺れる、

小さな石に指を伸ばす。

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「ピンクのやつ。何の石？」

「これ、珊瑚です、」

「へぇ、ハート型？」

「母から、貰いました、」

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そうなんだ、

目じりを下げた彼が、

そのまま頬づえをついて、

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「Aちゃん、ピンク好きなの？」

「好き、ですけど・・・どうしてですか？」

「だって、ホラ、携帯もピンクだから、」

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机の上に置いた携帯を、

指差して、やっぱり笑う。

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私の″好き″と″嫌い″を

少しの情報で見破る彼に、

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「櫻井さんは、どんな色が好きですか、」

「え？俺、は・・・」

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少し困ったように眉を下げた彼が

口を開いたのと、

店員さんが、私たちの所にピザを運んできたのは同時で。

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「俺のことは、いいじゃん、」

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そう言って彼は、

″もう話さない″と言うように、

水を口に運んだ。

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