Sho.S* COLD EMPEROR -The World of Ice- (ページ34)

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今、愛を語りましょう。ページ34

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その日、櫻井さんは、家に来て、

奥さんの話ばかりをした。

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ぽんぽん、と投げだされる話題に、

淡々と相槌を打てば、

気のせいか、少し不機嫌そうに眉を潜めた。

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顔こそ少し、不機嫌だけれど、

部屋に響く声は、優しくて。

まるで、初めてデートに行った時のような、それで。

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ソファに座る彼の足もとに腰を下ろすと、

櫻井さんは何も言わずに、

また、奥さんの事を話し始めた。

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「先週琴葉の誕生日だったんだよ、」

「…そうなんですか、」

「お前、帝都ホテルのスイート行ったことある？」

「いえ…ありませんけど、」

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目線を掬って、

マグカップに手を伸ばしたら、

ふん、と鼻で笑った後″相手いないもんな″と

言葉のナイフが飛んできた。

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「すげーんだよ、あそこで生活できるかんじ、」

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楽しそうに話す彼の目線は、

もう、私じゃなくて、手元の端末の上だ。

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彼の親指が、

何度も画面を往復する。

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彼に与えられたこのマンションも、

私には十分すぎるほどのものなのに。

彼は、″それ以上″を経験していて、

到底、釣り合わない。

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その時、だ。

私のピンクの携帯が音を立てて鳴って、

櫻井さんの纏う空気が変わったのは。

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そしてそれは、私がそれに出たことで、

益々、黒くなった。