Sho.S* COLD EMPEROR -The World of Ice- (ページ3)

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過ぎた日々を、思い出しましょう。2 ページ3

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伸ばしかけた手を、

すぐに引っ込める。

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少しの間空中を彷徨ったそれは、

一度置いた割り箸を持つことに、落ち着いた。

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「あー・・・私9番、です。」

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ひゅう、って、

場違いな口笛。

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「あー、俺、4番(笑)」

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口許を上げて、

少し困ったように頭を掻いたその人は、

くるくる、と大きな黒目を揺らして、

割り箸を左右に振って見せた。

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「なんだっけ？キスだっけ？」

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きょとん、と

王様の向かいの彼に聞くその人は、

慣れてるんだろう、

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人と人の間を通ったかと思うと、

すぐに私の傍に来て、

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ただでさえ狭い

私と友人との間に割り込んで座って。

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にっこり、笑った。

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名前なんて、覚えてない。

きっと、それは彼も同じ。

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男の人の割には、

長く伸ばした髪の毛が、

私の嫌いな、女に媚びを売る職業の彼らに似てると思った。

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まわりの空気が変わったのが分かる。

それはきっと、

初対面の私たちが・・・

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言葉もなく、見つめあっているからであって。

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きっと、誰もが狙っているこの人と、

今日さして目立ってもいない私が、

4番と、9番であることを、妬んでいるものであって。

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目の前の彼が、瞼を閉じる。

それを縁取っていた長いまつげが伏せられて、

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お酒の入った、熱い唇が重なった。

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きゃぁ、と、おぉ、と

悲鳴とどよめきが混ざった声が、

耳に入る。

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何事もなかったかのように笑ったその人は、

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「はい、終わり！俺はもう帰る(笑)！」

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ぱんぱん、と手を叩いてそう言って笑って、

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「じゃーあ、この子、貰うね、」

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ひょい、と私の右手首をつかんで、

行こうか、

私の返事も待たずに、

店の外に連れ出した彼は。

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「・・・ごめんね、キス、」

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そう言ってまた、

にっこり、笑った。

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