11 ページ29
「出張に行ったはずでは?」
有無をいわせぬ雰囲気で所長室に押し込められ、警戒しながらそう尋ねればいつもの様子で所長は笑った。
「昨日出発したはしたんだけど、面白い報告があったから帰って来たんだよね〜」
「…そうですか」
しばらく沈黙が続き、はぁ、と所長が溜め息を吐く。
「"面白い報告"って、Aちゃんの事なんだけど。
レオス君さ、僕に黙っていること、あるよね?」
鋭くなる目に平然を装い「さあ?」ととぼけてみせると、彼はつまらなそうに頬杖をついている。
「あくまでも彼女の味方ってことね。分かったよ。レオス君はもうちょっと賢いかと思ったんだけどなぁ」
買い被りだったみたいだね、と言うと手元のPCを操作し音声が流れ始めた。
音質は悪いが先程までのAと私の会話だ。
「…盗聴とは、随分いい趣味ですねぇ」
「あは、そうでしょ?…レオス君、僕ね嘘が一番嫌いなんだよ。ずーっと騙してたんだね2人共」
「……まぁ、そうなりますね」
ここまでバレているならもう何を言っても遅いだろう。
この男に許してくれと懇願する気も毛頭ない。
「潔いな〜レオス君は。でもいいよ。Aちゃんはいい素材になりそうだから。本っ当次の研究所に送る前に気付けてよかった」
「Aに…」
「え?何」
「Aにあまり酷いことをしないで下さい」
そう静かに言えば所長は驚いた顔をした後、大きな声で笑い出した。
「っは〜、あんまりおかしなこと言わないでよ。レオス君Aちゃんの事好きすぎて笑い止まらないんだけど。もしかして家畜に愛着湧くタイプ?言っておくけど彼女だってただの実験動物だよ」
「……」
「まあでも彼女もレオス君の事嫌いではないだろうし、意外と使えるか…。レオス君、Aちゃん殺されたくなかったら静かにしててね?」
所長は一人で話しきるとにこりと笑って銃口をこちらに向けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
豆腐の凉宮 - 泣けるううううう所長ゆるさんんん (6月11日 23時) (
レス) @page50 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 匿。さん» コメント、嬉しいお言葉ありがとうございます🙇✨!!次作も楽しんでいただけるよう頑張ります💪 (2022年6月4日 15時) (レス) id: 0a5bfdbc79 (このIDを非表示/違反報告)
匿。(プロフ) - 完結おめでとうございます！話の内容はもちろん、文章の書き方や描写の表現がとても素敵で大好きです！話の最後の方は思わず目が潤んでしまいました､､､。次作も楽しみにしています✨ (2022年6月3日 23時) (レス) @page50 id: 8c41784542 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - ソラさん» ありがとうございます✨ゆっくり更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2022年3月23日 12時) (レス) id: 0a5bfdbc79 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 文体が大好きです！これからも応援してます𖤐´- (2022年3月22日 22時) (レス) @page18 id: 1472b690a8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユナ | 作成日時：2022年3月11日 9時
