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「……A」
『エーミール様、今日はありがとうございました。これ、頼まれていた本です』
「……。あぁ」
『ユリア』
「……はい」
『ごめんね』
「……。謝罪は不要だと――」
『うん、でも、ごめんなさい』
――忘れかけてて、ごめんなさい。
上手く笑えていたかは保証できない。
ユリアが唇を噛み締めていたところを見ると、おそらく不恰好な笑みになっていたのだろうと思う。
『……明日はお休みなの。部屋で大人しくしてるわ』
「はい。昼頃、様子を見に伺います」
『えぇ。じゃあ、今日はもう休むことにするわ。エーミール様、失礼します』
「あぁ……ゆっくり休みなさい」
伏せた顔をそのままに、私は二人の間をすり抜けて門へと向かう。
裏門に立った見張りの兵士が、先程から何事かと様子を窺っているのには気付いていた。彼らに軽く会釈すると、エーミール様の部下と判断されたか、何のお咎めもなく城内に入ることが出来た。
『……』
楽しかったはずの気持ちが色褪せ、嬉しかったはずの手荷物が、ずしり、重くなる。
自室へと向かう足を止めずに、目をきつく閉じた。涙は出なかった。
瞼を上げた先に見えた景色は、何も変わらなくて。
――ほんの少しだけ世界が
――――……
――……
華奢な背中が遠ざかっていくのを見つめる。
目を離せば何処かに消えていってしまうのではないか。そんなことを感じさせる、華奢な、背中。
Aが角の向こうに消えるのを見送ってから、ユリアは傍らに立つ白衣の男性に声をかけた。
「エーミール様。本日はありがとうございました」
「……どうして、礼なんか」
「あの方が貴方に、ありがとうと仰ったからです」
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江之子(えのこ)(プロフ) - ささん» 初めまして、コメントありがとうございます。最新話のみならず読み返しまでしていただけるとは…。どうぞ、これからも長々とこの作品をご愛顧してもらえたらと思います！応援感謝です。 (2017年6月6日 16時) (
レス) id: d4b2bfad59 (このIDを非表示/違反報告)
さ(プロフ) - 初めまして。えのこ様のお話が大好きです。最新話を追いつつ初めから読み直しては楽しませてもらっています。これからも応援しております！ (2017年6月6日 15時) (レス) id: 91a8ff52f5 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ahirudokuro112さん» コメントありがとうございます。毎日気にかけてくださるほど印象を残せたこと、一書き手としては嬉しいばかりです。それをこうして文字にして伝えてくださったことをとてもありがたく思います！今度とも、どうぞよろしくお願いします。 (2017年6月4日 0時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
ahirudokuro112(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。いつもとても楽しく読ませて貰ってます。気づけば毎日朝と夜に更新されてないかチェックするのが日課になってます笑。ぜひこの気持ちをお伝えできたらとコメントさせていただきました。 (2017年6月3日 23時) (レス) id: f8fb3df520 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - 井戸らさん» コメントありがとうございます。私の場合、気が付いたらこんな文体になってまして、くどいかな…とドキドキしながら書いてる面があるのですが…。それを褒めていただけるのは何より嬉しいです。今後もお楽しみに！ (2017年5月27日 23時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2017年5月22日 1時
