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「それで、今日の議題はー?」
ロボロ様の声を受けて、グルッペン総統はカップを置いた。
「実は、アシュリア帝国から便りを受けてな。パーティーのお誘いだ」
そう言う彼は、何とも苦々しい顔をしていた。
「アシュリアから!?」
「しかもパーティー?」
「ぐ、グルッペンが、パーティー……って、に、似合わん!」
「笑うな、俺だって好きで言っとらん」
アシュリア帝国とは、先に一悶着あったサヴァン公国を挟んだ向こう側にある大国だ。我々国とは国境を接しておらず、今のところは友好国とも敵対国ともいえない関係であったはず。
アシュリア帝国は軍事的にも優れた国で、ここ最近は平穏を保っているものの、過去には数え切れぬ紛争に白星を付けたことが歴史にも刻まれている。
聞いてみると、そのアシュリア帝国で開かれる皇帝主催の親善パーティに招待されたらしかった。
曲がりなりにも王族である私も、その重大さは分かる。
「皇帝直々に招かれちゃあ、断れへんなぁグルちゃん」
「……」
頬杖をついて悪戯っぽく言うオスマン様に、総統はさらに苦虫を噛み潰したように押し黙った。
どうやら周りが冷やかすくらい、パーティーといったものに好感は抱いていないらしい。
「サヴァン公国の大公がまた変わったってのはあっちだって知っとるはずや。今のところはまだうちが介入したのはバレてへんやろうけど、ここは素直に招かれて適当に良い顔はしとかんと」
「……あぁ、分かっとる」
「ははっ、めんどっちいんやなぁ総統も」
「仕方ないだろ、今はまだ手を出すときじゃない」
正直、ぞく、と慄くのが自分でも分かった。
今はまだ。――彼らは今ではない未来の敵として、かの帝国を視野に入れているのだ。
アシュリア帝国は、軽い気持ちで手を出していいほど小さな存在ではない。
「せっかく公国を味方に引き入れたんだ。ここで台無しにする訳にはいかんしな……ふん、致し方ない」
結局我々国とサヴァン公国がどういった関係を結んだのか、私は聞くことはなかった。
しかし今の口ぶりだと、少なくとも彼の思惑通りに動いたとそういうことらしい。
「……で、とりあえずは参加すんねやろ? 今日の話し合いは? その護衛?」
「あぁ、まぁそれもあるが」
グルッペン総統はそこで言葉を切って、トントン様に目配せした。
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江之子(えのこ)(プロフ) - ささん» 初めまして、コメントありがとうございます。最新話のみならず読み返しまでしていただけるとは…。どうぞ、これからも長々とこの作品をご愛顧してもらえたらと思います!応援感謝です。 (2017年6月6日 16時) (レス) id: d4b2bfad59 (このIDを非表示/違反報告)
さ(プロフ) - 初めまして。えのこ様のお話が大好きです。最新話を追いつつ初めから読み直しては楽しませてもらっています。これからも応援しております! (2017年6月6日 15時) (レス) id: 91a8ff52f5 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ahirudokuro112さん» コメントありがとうございます。毎日気にかけてくださるほど印象を残せたこと、一書き手としては嬉しいばかりです。それをこうして文字にして伝えてくださったことをとてもありがたく思います!今度とも、どうぞよろしくお願いします。 (2017年6月4日 0時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
ahirudokuro112(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。いつもとても楽しく読ませて貰ってます。気づけば毎日朝と夜に更新されてないかチェックするのが日課になってます笑。ぜひこの気持ちをお伝えできたらとコメントさせていただきました。 (2017年6月3日 23時) (レス) id: f8fb3df520 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - 井戸らさん» コメントありがとうございます。私の場合、気が付いたらこんな文体になってまして、くどいかな…とドキドキしながら書いてる面があるのですが…。それを褒めていただけるのは何より嬉しいです。今後もお楽しみに! (2017年5月27日 23時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:江之子 | 作成日時:2017年5月22日 1時