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「この子見ると、あの子思い出すねん」
「末期やん」
「そうかもぉ」
「シャオちゃん……」
隠すことなく表情を緩ませる彼に、鬱様は呆れたように煙を吐いた。
"この子"も"あの子"も、結局は私だ。好意を向けられて嬉しくない人は居ないと思うので、正直に言えば私だって嬉しい。
しかしここまで真っ直ぐで純粋な好意だと、次に生まれるのは戸惑いだ。
「でもな……あれから一回も会えてへんねん。何回も城下行ってんねんけどなぁ」
「最近やたらと出掛けてんのはそのせいか」
それも致し方ない。
私はあの日以来、一度も城を出ていないからだ。会えようはずもない。
約束を交わしていないといえど、決して見つからない相手を探させる羽目になるとは、申し訳なさも感じるというものだ。
願わくば、そのまま私など忘れてしまえばいい。
そんな無責任なことを思っていると、ふと鬱様の視線を感じた。彼は私の顔を改めて眺めると、ぽつりとこんな風に呟く。
「確かに……この子に似てるんやったら、なかなか可愛い子なんやろなぁ」
「そやで、可愛いで」
「僕にも紹介してや」
「する訳ないやろ。っていうか俺だって会えてへんねん！」
あ、と気付いた。
そういえば鬱様は、私が城下に下りたことがあるだなんて知らないのだろう。ということは、彼の中でも"この子"と"あの子"は別人だ。
驚かせてみよう、とむくむくと悪戯心は顔を出す。
シャオロン様が机に項垂れて、鬱様だけが私を見ているときを見計らい。私は人差し指を自分の顔に向けて、笑ってみせた。
「……？」
その仕草に鬱様は初めきょとんと瞬きすると、徐々に驚きに顔を染め上げていった。
「しゃ、シャオちゃ……」
「ん？」
――ポト。咥えていた煙草が床に落ちる。
「あああっ、何してん大先生！ 危ないやん！」
「え、え、シャオちゃんあんた……！」
「はぁ？ 何や」
はくはくと口を開け閉めして、シャオロン様を見やる鬱様。聞こえない声は、信じられない、と語っていた。
対するシャオロン様は、落ちた煙草の火を慌てて踏み消している。
「まじかシャオちゃん、ありえへんで……」
尚も傾ぐ赤いニット帽に、鬱様は頭を抱えて項垂れた。
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江之子(えのこ)(プロフ) - ささん» 初めまして、コメントありがとうございます。最新話のみならず読み返しまでしていただけるとは…。どうぞ、これからも長々とこの作品をご愛顧してもらえたらと思います！応援感謝です。 (2017年6月6日 16時) (
レス) id: d4b2bfad59 (このIDを非表示/違反報告)
さ(プロフ) - 初めまして。えのこ様のお話が大好きです。最新話を追いつつ初めから読み直しては楽しませてもらっています。これからも応援しております！ (2017年6月6日 15時) (レス) id: 91a8ff52f5 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ahirudokuro112さん» コメントありがとうございます。毎日気にかけてくださるほど印象を残せたこと、一書き手としては嬉しいばかりです。それをこうして文字にして伝えてくださったことをとてもありがたく思います！今度とも、どうぞよろしくお願いします。 (2017年6月4日 0時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
ahirudokuro112(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。いつもとても楽しく読ませて貰ってます。気づけば毎日朝と夜に更新されてないかチェックするのが日課になってます笑。ぜひこの気持ちをお伝えできたらとコメントさせていただきました。 (2017年6月3日 23時) (レス) id: f8fb3df520 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - 井戸らさん» コメントありがとうございます。私の場合、気が付いたらこんな文体になってまして、くどいかな…とドキドキしながら書いてる面があるのですが…。それを褒めていただけるのは何より嬉しいです。今後もお楽しみに！ (2017年5月27日 23時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2017年5月22日 1時
