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「……なぁ、これ、シャオさん?」
『っ……!?』
――どうして。
察しが良いでは済まされないほど核心を突いた台詞に、大袈裟なくらいに反応を示してしまう。肯定ととられても仕方がなかった。
やっぱりな、と言わんばかりに目を細めて、トントン様はそれを元あったように戻す。
『……あ、あの、偶然お会いして、街を案内してくださったんです。私がわがままを言ってしまって――』
「ええよ、怒ってない」
『あ……』
確かに彼は笑っていたけれど、眼鏡の奥が
ともすればシャオロン様が咎められてしまうのでは、と嫌な汗が滲む。それはいただけない事態だ。
『トントン様――』
尚も言い訳を募ろうと、一歩彼に近付くと。
『……!』
「……ごめん、ほんとに怒ってる訳やないから」
ふわ。腫れ物に触れるかのように、頬を撫ぜた指。
あ、と思った時にはすでにその感触はなくて、彼と私の間には幾ばくかの距離が空いていた。
「優しいんやね」
そうやって笑う彼は、トレードマークの赤いマフラーを整える。
踵を返して扉に向かうトントン様。思ったより長居してもうたわ、その声は普段通りの彼のものだ。
『私は、優しくなんて……』
「今日はエミさんもオスマンも居残り組やし、何かあったら言うんやで?」
『……はい』
「A」
『……!』
トントン様は普段、あまり私の名を呼ばない。
顔だけこちらを振り返った彼に、何を言われるのか見当もつかなかった。
「君が優しいのは好ましいけど……もっと、周り見てや」
『……』
やがて、部屋に静寂が戻った。
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江之子(えのこ)(プロフ) - ささん» 初めまして、コメントありがとうございます。最新話のみならず読み返しまでしていただけるとは…。どうぞ、これからも長々とこの作品をご愛顧してもらえたらと思います!応援感謝です。 (2017年6月6日 16時) (レス) id: d4b2bfad59 (このIDを非表示/違反報告)
さ(プロフ) - 初めまして。えのこ様のお話が大好きです。最新話を追いつつ初めから読み直しては楽しませてもらっています。これからも応援しております! (2017年6月6日 15時) (レス) id: 91a8ff52f5 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ahirudokuro112さん» コメントありがとうございます。毎日気にかけてくださるほど印象を残せたこと、一書き手としては嬉しいばかりです。それをこうして文字にして伝えてくださったことをとてもありがたく思います!今度とも、どうぞよろしくお願いします。 (2017年6月4日 0時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
ahirudokuro112(プロフ) - 初めてコメントさせてもらいます。いつもとても楽しく読ませて貰ってます。気づけば毎日朝と夜に更新されてないかチェックするのが日課になってます笑。ぜひこの気持ちをお伝えできたらとコメントさせていただきました。 (2017年6月3日 23時) (レス) id: f8fb3df520 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - 井戸らさん» コメントありがとうございます。私の場合、気が付いたらこんな文体になってまして、くどいかな…とドキドキしながら書いてる面があるのですが…。それを褒めていただけるのは何より嬉しいです。今後もお楽しみに! (2017年5月27日 23時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:江之子 | 作成日時:2017年5月22日 1時