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悪戯に目を細めたのは、これまた幹部のお一人。しかもこの国で最高戦力とも謳われるゾム様だった。
元よりここには、使用人以外では幹部しか出入りしないが。
「ちょっと小腹が減ってなぁ。つまみ食いしに来た」
「おっ、そんならちょうど良かった。今な、ケーキ買ってきてん。誰もおらんから我慢しようと思っててんけどな」
「そうやったん」
「君、二人分のケーキと紅茶、用意してくれへん？」
「ほんま、オスマン甘いもん好っきゃなぁ」
かしこまりました。
返事をして、私はその白い包みを抱えて厨房のほうへと下がった。手早く紅茶の用意を済ませ、ケーキの包みを開ける。
ふわり、甘い匂いが鼻をかすめた。
ささやかな幸せというやつか。まぁ、私は食べられないのだけど。
ワゴンを押して食堂へ戻ると、お二人は向かい合って座り談笑していた。
いち早くこちらに気付いたオスマン様が、にっこりと笑みを深める。
本当に甘いものがお好きらしい。紅茶にも砂糖は必須と聞いた記憶があるので、少し多めに用意しておいた。
流石に、角砂糖四つ目を手にとった時には、思わず声をかけてしまいそうになったが。
「やっぱり、美味しいめうー」
「ん、んまいな」
この国を支える幹部たちも、ささやかな幸せにはこうやって頬を緩めるのか。
何だか感慨深いような奇妙な感覚になってしまい、壁際に控えたあとで、二人の様子を不躾にも眺めてしまう。
その視線を感じたか否か、オスマン様がちらりとこちらに目を寄越した。
バチリ、視線がかち合い、まずいと思った時にはもう、声をかけられた後で。
「君も、食べたい？」
『……は』
「んあ？」
「ケーキ美味しいよー」
「お、オスマン？」
思ってもみなかった言葉に、間抜けにも声が洩れる。
すぐに口をつぐんだが、ゾム様はそれよりもオスマン様の言葉のほうに困惑を示しており、彼と私を見比べていた。
さながら、「お前何言ってんの？」といったところか。
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夜風−yorukaze−(プロフ) - とても面白くて、サクサク読めます！これからも頑張ってください！ (2020年4月26日 17時) (
レス) id: 58cfefca5b (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - wlthzさん» コメント、ご意見ありがとうございます。一言についてですが、このスタンスをとれるのも紙媒体の小説にはないサイトの魅力だと考えていますし、これを気に入ってくださる方も居るので、今後は思いついたときに挿入するスタイルに変更しようと思います。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
wlthz(プロフ) - コメント失礼します。１話終わるごとに挿入される一言で興が削がれます。物語自体は面白く読ませて頂いているので、そこだけが少し不満です。 (2017年7月24日 19時) (レス) id: 45eb196b6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2017年5月9日 0時
