16#再会、そして ページ48
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城下街は、あの日と変わらない。ユリアと一緒に歩くのも楽しかったが、こうして一人で気の向くままに歩くのもまたいいものだ。
とりあえずはエーミール様に頼まれた本を買ってしまおうと、預かった城下の地図を覗き込む。
この地図、目的地の書店ばかりではなく、かなり広範囲まで描かれている。
まるで初めから城下を散策することが前提のような地図に、人知れず苦笑が洩れた。
そうこうしている内に、書店に辿り着いた。
エーミール様御用達というのは本当のようで、ここはかなり大きなお店で、ざっと見る限りでもいろいろなジャンルの本が置いてあるのが分かった。
――さて、ここから目的のものを探すのは一苦労だぞ。
「……な、なぁ!」
……あ、この本あっちの国でも見たことある。
「ね、君!」
『え……? っ、シャ――』
――シャオロン様。
すんでのところで、名前は呑み込んだ。誰かを呼びかける声は聞こえていたのだけど、まさか自分ではないだろうと高を括っていたのだが。
ぽん、と叩かれた肩に反応すると、そこにはよく見知った顔が。
『ええっと……あの、シャオロン様……?』
「……! おう! 俺のこと知ってるんや!」
『それは、幹部様は有名ですし……』
控えめに笑いながらそう言ってみせると、シャオロン様はそれは嬉しそうに破顔して喜ぶ。
「なんか嬉しいわぁ、さんきゅなー」
『……どういたしまして?』
私が彼を知っているのは当たり前なのだけど、シャオロン様は今目の前に居る私と、使用人のAは全くの別人だと思っているのだ。
礼を言われるのも変な話だが、差し障りのない言葉を返しておく。
『ところで、シャオロン様はどうしてここに? お一人ですか?』
「今日は連れと一緒に買い出しに来てるんやけど、えっとあのー……その、君がここに入ってくのが見えたから」
『え?』
「思わず、声かけてしもてん」
『……そう、でしたか』
照れくさそうにニット帽を触りながら、シャオロン様は視線を泳がせる。
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作者名:江之子 | 作成日時:2017年5月9日 0時