7#合った視線 ページ20
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両手に紙袋を引っ提げて、私たちは太陽の照り付ける石畳を歩いていた。
特別日差しに弱い訳ではないが、こうやって陽光に晒されるのに慣れている訳でもないので、朝よりかは少しだけ身体が重い感覚。
「お嬢様、お荷物お持ちします」
『もう、それ何度目よ。いいのよ、せっかく楽しくお買い物に来てるんだから、自分のものは自分で持つのも楽しみよ』
立ち寄った店から出る度に申し出される提案を、私は断り続ける。
確かに私と彼女の立場を考えると、彼女の申し出も仕方のないことかもしれないが(彼女の生真面目すぎる性格を鑑みると尚更)。
じわりと滲む汗の感覚も含めて、私は今この時間を楽しんでいるのだから。
己の仕事に堅実すぎるのも困りものだな、と、ユリアの態度を今後どう改めさせようか、そんな課題が生まれたとき。
「あ……あれ、あの方、ひとらんらん様よ!」
「えっ、うそ、ホントだわ! 一緒にいらっしゃるの……シャオロン様とコネシマ様じゃない?」
「まぁ、幹部様がお揃いで、お買い物かしら」
傍らでなされる会話が、くっきりと耳に入ってきた。
何とはなしに流していた周囲の言葉がそこで形を成したのはきっと、含まれていた名前に聞き覚えがあったからで。
きゃあ、と少しだけトーンの高くなった声で、街をゆく女の子たちは嬉しそうに頬を染めていた。
きっと、色めき立つってこういうことを言うんだろうな。
自分が女であることを棚に上げて、お互いに顔を見合わせはしゃぐ彼女たちを、素直に可愛らしいと思った。
彼女らの視線の先には、当然話題に出た三人。
あの店はなんだろうか。ショーウィンドウを覗き込み、ああでもないこうでもないと何やら言い合っているのが見える。
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夜風−yorukaze−(プロフ) - とても面白くて、サクサク読めます!これからも頑張ってください! (2020年4月26日 17時) (レス) id: 58cfefca5b (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - wlthzさん» コメント、ご意見ありがとうございます。一言についてですが、このスタンスをとれるのも紙媒体の小説にはないサイトの魅力だと考えていますし、これを気に入ってくださる方も居るので、今後は思いついたときに挿入するスタイルに変更しようと思います。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
wlthz(プロフ) - コメント失礼します。1話終わるごとに挿入される一言で興が削がれます。物語自体は面白く読ませて頂いているので、そこだけが少し不満です。 (2017年7月24日 19時) (レス) id: 45eb196b6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:江之子 | 作成日時:2017年5月9日 0時