第07話 賢者の石ー7 ページ9
いよいよ退院の日となって、私は退院の準備を始めた。と、言っても私に纏めるような荷物はなかった。私の持っている物と言えば、ローブと杖くらいだ。後、羽ペンとインクと羊皮紙を少々。そして、この私の命を救ったペンダント。
ペンダントを首から外して眺める。このターコイズのペンダントは私が持てる力全てを注ぎ込んで作った。これには、一度だけ闇の魔術から身を守るように魔法をかけてある。例のあの人の死の呪文を受けても命があったのはそういう理由だ。しかし、あの人ほどの魔法使いの操る呪文をも防げるとは思っていなかったから、本当に驚いた。ああ、私が生きているのならあの子だって生きられた筈だ。このペンダントは元々リリーのために作ったものだった。それを修理のために私が持っていた。私の修理が間に合っていれば、あの子は死なずにすんだのに。くすんだターコイズに力を込めると、石は簡単に割れてしまった。
「これじゃあ、一から作り直しじゃないか……」
転がっていった破片を拾うために一歩踏み出したとき、目の前に突然人が現れた。全身黒ずくめの男に見覚えはないが、あの黒髪を、あの土気色の肌を、そして不機嫌そうにひそめられた眉を、私は知っている。
「セブルス、かい?どうして、お前が」
あまりに驚いたものだから、変な声が出た。私はとんでもない間抜け面をしていたと思う。
「貴様の迎えだ、A。校長直々の指名があったのでな」
「お前、ホグワーツで働いているのかい?その、あまり言いたくないけれど、お前は闇の魔術に随分と傾倒していたように思えたけど」
「その話は今すべきではない。今の我輩はホグワーツの魔法薬学教授のセブルス=スネイプだ」
低く唸るような声で吐き捨てるようにそう言うと、セブルスは杖を振ろうとしていた。
「待ってセブルス。この辺りにターコイズの欠片が落ちているはずなんだ。一緒に探してくれないか」
魔法を使おうとしていたセブルスの腕を掴んで引き留める。彼は至極面倒そうな顔で杖を握っていない方の手をこちらに差し出してきた。
「お探しのものはこれですかな。大切なものならば精々なくさないように」
彼の手のなかには、先程落としたペンダントの欠片があった。
「ああ、ありがとう。気を付けるよ、スネイプ教授」
ペンダントの欠片を受け取って、今度こそ私は手の中に握りこんだ。ローブから杖を取り出して振る。こんなに高度な魔法は8年以上使っていないけど、上手く使えるだろうか。
追記
言う機会がないのでここで言っておきます。主人公の髪型のイメージは刀剣乱舞の山姥切長義。イメージcvは置鮎龍太郎さんか関智一さんです。
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作者名:えの。 | 作成日時:2019年2月3日 23時