翠の灯火 (ページ12) - 小説/夢小説

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第10話　賢者の石ｰ10 ページ12

ー暗闇の中で何かを追いかけている。呼吸は苦しく、体は泥のように重たい。それでも足は止まらない。
　
　目の前で緑が広がる。光が収まった後には、床に崩れ落ちた人影。横たわる誰かの顔が見えた。ジェームズ=ポッターだ。

　ああ、これは夢だ。だって、私が彼の死に顔を知っているはずがない。私は玄関の外で意識を失っているのだから。

　夢だと分かっても足は止まらなかった。ジェームズを殺したあの人を追って2階へ向かう。やめろ。行くな。2階にはリリーがいるんだ。階段を駆け足で上ってもなぜか目の前の影に追いつけない。黒い影は、走って追いかける私を悠々と歩いて引き離していく。どうして追いつけないんだ。

　影が階段を上りきる。やめろ、やめてくれ。影を追って奥の部屋に入る。

　途端に、緑の閃光が迸る。リリーの悲鳴が頭の奥で木霊する。崩れ落ちるリリーの虚ろな瞳に杖を持った私が映りこむ。私の杖ではない。いつのまにか黒い影は消えていて、私は彼の杖を持っていた。なぜ、私がこれを。床に転がったハリーがむくりと起き上がる。こちらを向いて嗤う顔は、あの人のものだった

「ああああああああああああああ!!!!!!!!」
　意識が覚醒する。乱れた呼吸に、冷や汗も止まらない。今のは何だ。私が、本当にあの子を殺したのか。体の震えが止まらなかった。

　その晩からAは同じ夢を繰り返し見るようになり、彼の不眠の日々が始まった。