隣の縁下くん【縁下力】

早くない？ ページ11

夏休みに入って、すぐ。

元々東京遠征に行くのはわかっていた。わかっていたよ、けどさ。…夜中の三時集合はちょっと早くない？東京、都会って言うのはわかるけどそんな遠いもんなんだ。もう一生行く機会ないかもしれない。

早すぎるとは言え、引き受けたからには遅刻なんて言語道断。電車で寝落ちしてしまうことまで視野に入れて、随分早く来てしまったようだ。一時間前。誰も居ない。夏とは言うものの、夜中だから寒い。舐めて半袖で来たのはさすがに間違えだったかもしれない。

寒さに凍えながら待っていると、縁下くんの声。随分しっかりしているようで誰よりも(私はおいといて)早く来る彼に好感を抱かずにはいられなかった。

「和澄、早いね…って、さむくない？」

ジャージを着こんだ彼にそう問われる。寒い。半袖は寒い、から正直に「深夜、なめてた。」と答えると苦笑して自分のジャージを渡してくれる。

「え、でも縁下くんが寒いんじゃ…」

「俺は慣れてるから平気。」

そう言うが、少し罪悪感が…そんなことを言って、縁下くんに交わされ、を繰り返して結局ジャージを借りることにした。うう、申し訳ない…和澄A、一生の不覚。

それにしても、暖かい。

そして縁下くんのだから大きい。袖がすごく余る。女子にしては私も背が高い方だけど、やはり男子…しかもバレー部には叶わないようだ。

徐々に部員も集まってきて、バスに乗る。

そういえば日向くんと影山くんは補習なんだっけ、いないと思ったら忘れてた…まあ、災難だけど龍のお姉さんにつれてきてもらえるって言ってた。冴子さんなら多分大丈夫。…多分。

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