『執務室にて』2 ページ10
「ロズワールだって、エミリア自身の事はどうでもいい。あなたが見ているのは、自分の目的だけ。エミリアは、そのために利用する駒。そうでしょ？」
「…これだから、頭の回転の早い者は扱いづらい。そのぶんだと、既に私の内心も見透かしているのかーぁな？」
先程よりも表情を和らげ、ロズワールは尋ねる。しかし、彼の纏う空気は全く変わらず、重いままだ。
「ロズワールは、私を追い出すことなんてできない。だって、あなたの目的のために私は必要なはずだから」
「自分の目的のために、私の目的のための駒になると？いいのかな？私の元にいれば、いずれは君の会いたがっていた人とも敵対する事になるのでは？」
「彼らは私より強いから、敵対したとしても私のことを攫ってくれるよ。私からロズワールを裏切る事はない。約束する」
「契約ではなく、約束か」
ふっ、と嘲弄めいた笑いを浮かべるロズワールに、Aは何も言わない。
部屋の空気は、もう重くない。それが答えだった。
「しょうがないねーぇ。乗ってあげるとしよう。ーーそういうところが、君が精霊に嫌われる所以なんじゃないかなーぁ？」
「私は、自分が不利になるような約束も契約もしないよ。まあ、場合によってはそれらを破る事も念頭に入れてるから…精霊からしたら、面白くない相手だろうね」
互いに表面だけの笑みを交換しあい、Aは話は済んだとばかりにロズワールに背を向ける。そして扉に手をかけたまま立ち止まり、
「そうだ。ちょっと誤解があるようだから正しておくと…私は、『大切な人』以外がどうでもいいんじゃなくて、他の人と比べ物にならないくらい、彼らが好きだって、それだけの話だから」
それだけ言って、ロズワールからの返事を待たずにAは部屋を後にした。
その背中を見送ったロズワールは、一人、彼女の姿を閉められた扉に幻視しながら、
「…『大切な人』が危険な目に遭った時、君は周りにいる者などお構いなく彼らを助けに行くだろう。それは、彼ら以外はどうでもいいと、同じ事ではないのかな？一つを守るために全てを犠牲に出来る。
ーーだから私は、君を信じられる」
静かに静かに、そう、言った。
＊
閉められた扉の前で、Aは俯き、その端正な顔を前髪で隠した。
「一つを取るために全てを犠牲にするあなたと、私は違う。私は、その一つを置いておく世界も、全部大切にしたい。
ーーだから私は、あなたが嫌いなんだ」
彼女は震える声で、そう、言った。
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籠球(プロフ) - スーディンさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです。よろしければ、続編の方でも応援よろしくお願いします！ (2017年8月17日 0時) (
レス) id: a6bccb531e (このIDを非表示/違反報告)
スーディン - 楽しく読ませてもらっています！ (2017年8月16日 21時) (レス) id: b99a23d97e (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» わわ、またまたコメントありがとうございます！一人称については、本当ですね。気づきませんでした…ご指摘ありがとうございます！修正しておきます！お褒めの言葉も、凄く嬉しいです…！よろしければこれからも応援よろしくお願いします！ (2017年8月10日 5時) (レス) id: c62e084d94 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - またまたお邪魔しますー。戦闘シーンとか「明日を求めて」→「明日を求めた」とか本当かっこいいです…!ところで、ページ35のレムの台詞の一人称が私になっていて、誰かを明かしたくないのであれば主語を省略すると良いと思います(上からみたいですみません) (2017年8月10日 5時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - Mさむさん» コメントありがとうございます！お褒めのお言葉、凄く嬉しいです…！確かに、陣営によっては書く必要のない章も出てきますよね。エミリア陣営は原作と同じ視点から物語を書けるので、恐らく最も書きやすいと思います。小説の更新、頑張ってください！応援してます！ (2017年6月25日 16時) (レス) id: 6a9b5f0fc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏みかん | 作成日時：2017年5月6日 20時
