『明日を求めた』 ページ36
夜中のロズワール邸で、鎖の音と突風が激しくぶつかり合う。
「お願いします。もう、諦めてください。レムが手を下さなくても、スバル君はもう永くありません」
「それでも、私はスバルと約束したんだよ!絶対死なせないって!だから、ーーっ!」
軌道を逸らした鉄球が、顔のすれすれを通って壁に激突した。トゲで頰の皮膚が切れ、血が伝う。
「あ…っ、す、すいません!Aさん、大丈夫ですか!?」
「私の事を心配してくれるんなら、スバルへの攻撃もやめてほしいんだけど…?」
乱暴に血を拭って、攻撃の手を止めたレムを見据える。
先程から何度も放たれる攻撃は全てスバルに向けられたものであり、Aにそれを向けた事はただの一度もない。むしろ、Aが怪我をしないように気をつかっているようにも感じる。
「これ以上暴れたら、そのうちロズワールたちだって不審に思うよ。エミリアにも、…ラムにも。こんなところ見られちゃマズイんじゃないの?」
「でも、レムは…スバル君を見逃すわけにはいかないんです。だから、レムを止めたいのなら力づくででもないと」
「ふうん…。じゃあ、その通りにしようかな」
絨毯を思い切り蹴って、体を前に傾ける。そのままもう一度床を蹴れば、レムとの距離が一気に縮まった。
「っ…!?」
「ごめんね、加減はするから」
メイド服に包まれた腹にそっと手を置き、力を込めて押し出す。
その瞬間、無防備なレムの体が一瞬跳ねて、抵抗することなく絨毯の上に横たわった。
「ぅ、けほっ、体術もできるなんて…初耳、でした」
「うん。使う機会もなかったしね。それに、魔法、剣術、体術だったら魔法以外はそこまで得意じゃないんだ。気絶させることだってできない」
両の手をぐっぱっとレムに向かって見せる。
Aの戦闘の基本スタイルは、本気で構えなくてはいけない相手に対してはまず剣術で力量を図り、魔法で叩き潰す。
しかし、今回のように相手にあまり怪我させたくない場合に関しては、不得手な体術でその場を凌ぐことが多い。
「ね、痛いでしょ?だからもうやめようよ」
「…やっぱり、Aさんは優しいです。でも、それは戦闘に関しては『甘い』というんですよ」
しゃがみこみ、レムに語りかけるAに、レムは腹を抑えながら体を起こし、口端を軽く上げた。
「ごめんなさい」
「ーーっ!?」
レムの振り上げた鎖が、Aの横腹を勢いよく打った。
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籠球(プロフ) - スーディンさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです。よろしければ、続編の方でも応援よろしくお願いします! (2017年8月17日 0時) (レス) id: a6bccb531e (このIDを非表示/違反報告)
スーディン - 楽しく読ませてもらっています! (2017年8月16日 21時) (レス) id: b99a23d97e (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» わわ、またまたコメントありがとうございます!一人称については、本当ですね。気づきませんでした…ご指摘ありがとうございます!修正しておきます!お褒めの言葉も、凄く嬉しいです…!よろしければこれからも応援よろしくお願いします! (2017年8月10日 5時) (レス) id: c62e084d94 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - またまたお邪魔しますー。戦闘シーンとか「明日を求めて」→「明日を求めた」とか本当かっこいいです…!ところで、ページ35のレムの台詞の一人称が私になっていて、誰かを明かしたくないのであれば主語を省略すると良いと思います(上からみたいですみません) (2017年8月10日 5時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - Mさむさん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉、凄く嬉しいです…!確かに、陣営によっては書く必要のない章も出てきますよね。エミリア陣営は原作と同じ視点から物語を書けるので、恐らく最も書きやすいと思います。小説の更新、頑張ってください!応援してます! (2017年6月25日 16時) (レス) id: 6a9b5f0fc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏みかん | 作成日時:2017年5月6日 20時