『最後の夜』2 ページ22
ぴくりと、ラムの体が微かに震えた。
全く意図しないところからの質問にほんの少しだけ動揺したように見えたが、一瞬のうちにそれは隠されてしまう。
そしていつもと変わらぬ無表情に訝しげな色を乗せたラムが、Aの目を真っ直ぐ射抜いた。
「…質問の意図が分からないわね。見ての通り、ラムはバルスの事を使い勝手の良いバカ犬のように可愛がっているわ」
「ぱっと見たら、私だってそう思ったよ。流石に犬とまでは思わなかったけど。でもさ、たまーに隠しきれてない警戒心みたいなものが見えるんだよね」
実際には警戒心が見えているのではなく、スバルの死の気配が近づくタイミングから予想をつけたに過ぎない。
Aにはどうしても、ラムとレムがそこまで人を疑うようには思えなかったのだ。
「ね、スバルはあの通りバカで自分一人じゃ何にもできないような男だよ？エミリアを助けた恩人を、なんで警戒したりするの？」
「…てっきりAさんはそういう人の負の感情に疎いのかと思っていたわ。根が甘いというよりは、そういう境遇に生まれてしまった不幸と言った方がいいかしら」
ラムの皮肉めいた言葉を否定できなくて、じっと黙ってラムが質問に答えるのを待つ。
誤魔化しきれないと判断したのかラムがはーと長いため息をついて、その足を食堂に向けながら話しだした。
「Aさんが期待するような答えではないと思うわ。こんな時期に、身元不明の人間が屋敷に入り込んできたら警戒するのが当たり前でしょう」
「でも、私がここに来た時はラムもレムもそんな素振り少しも見せなかったよ。時期が悪いっていうのは確かにそうだと思うけど、それにしたって対応が違いすぎる」
「それは、バルスが特別なんじゃなくてAさんが生まれながらに持つ加護のおかげよ。バルスじゃなくたって、あなた以外の人間ならラムたちは最大限に警戒するわ」
早足で先を行くラムの表情は見えない。
それはつまり、彼女もこちらの表情を見る事はできないということで。
だから、その言葉を聞いた瞬間のAの悲痛に歪む表情に気づけたのは、この場には誰もいなかった。
＊
ーー私は、自分の加護が大嫌い。
それなのにその加護に頼りながら今までずっと生きてきた自分が酷く卑怯に思えてしまって、自分さえも嫌いになってしまいそう。
生まれながらに授かる、神からの祝福？
そんなことない。これは、私が生まれながらに授かった“呪い”だ。
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籠球(プロフ) - スーディンさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです。よろしければ、続編の方でも応援よろしくお願いします！ (2017年8月17日 0時) (
レス) id: a6bccb531e (このIDを非表示/違反報告)
スーディン - 楽しく読ませてもらっています！ (2017年8月16日 21時) (レス) id: b99a23d97e (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» わわ、またまたコメントありがとうございます！一人称については、本当ですね。気づきませんでした…ご指摘ありがとうございます！修正しておきます！お褒めの言葉も、凄く嬉しいです…！よろしければこれからも応援よろしくお願いします！ (2017年8月10日 5時) (レス) id: c62e084d94 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - またまたお邪魔しますー。戦闘シーンとか「明日を求めて」→「明日を求めた」とか本当かっこいいです…!ところで、ページ35のレムの台詞の一人称が私になっていて、誰かを明かしたくないのであれば主語を省略すると良いと思います(上からみたいですみません) (2017年8月10日 5時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - Mさむさん» コメントありがとうございます！お褒めのお言葉、凄く嬉しいです…！確かに、陣営によっては書く必要のない章も出てきますよね。エミリア陣営は原作と同じ視点から物語を書けるので、恐らく最も書きやすいと思います。小説の更新、頑張ってください！応援してます！ (2017年6月25日 16時) (レス) id: 6a9b5f0fc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏みかん | 作成日時：2017年5月6日 20時
