『夢』 ページ17
バンガルと話しているうちにレムの買い物が終わったようで、Aは名残惜しそうにしているバンガルに別れを告げて屋敷までの帰路についた。
「またお話ししましょう！」と手を振るバンガルに手を振り返して、悪い人ではないんだなと思う。
「なんかいい雰囲気だったじゃんよ、どんな話してたんだ？」
「別に…ただの世間話だよ。スバルこそどうしたの？その手の傷」
ニヤニヤしながら隣を歩くスバルに適当に返事を返し、視線を重い荷物を持つスバルの手へやる。
そこには、獣の噛み跡がくっきりと残っていた。
「ガキどもに紹介された犬畜生に思いっきり噛まれたんだよ。クソ、痛え」
「ふーん、なんかやだね、それ」
「病気でも持ってたらどうすんだってな。こっちでも狂犬病みたいなのはあんのかな？」
薄っすらと血の滲むそれを見つめて、眉をひそめるスバル。
Aはその傷を見て、スバルの死の気配が一層近づいた事を感じ取っていた。
＊
屋敷につき、厨房まで買った物を持っていけばとりあえずAの仕事は終わりだ。
元々使用人でもないし、今日はただのお手伝いみたいなものだったのでこの後は部屋にいようが何しようが文句は言われない。
まだ仕事の残っているらしいスバルと別れて、Aは自室へと戻った。
「うーん、疲れちゃった。する事もないし、ちょっとだけ寝ようかな…」
ふわあと欠伸をしながら、ベッドに後ろから飛び込む。
ベッドが衝撃にぎしりと音を立て、跳ねた掛け布団から埃が舞った。
枕に頭を乗せて目を瞑れば、うとうとと意識が沈んでいくのがわかる。
そのまま布団の中で体を丸めて暫くすれば、規則正しい寝息が部屋の中で静かに広がった。
＊
夢、これは夢だ。
私の体はどこにもない。手も足も口も、なにもかもがこの空間には存在しない。
あるのはこの意識だけ。ここは、目を瞑る事も、顔を背ける事もできない存在にただ延々と何かを見せつけるための、だったそれだけの場所だ。
見せられているのは、赤い髪の青年と紫髮の青年。現実よりも幼いだろうその姿は、私が最後に見た彼らのまま、止まっている。
手を伸ばしたい。けれど腕がない、体がない。
もどかしくて叫びたくなるけれど、口がないからそれもできない。
名前を呼びたい、触れたい、抱きしめたい、駆け寄って、またあの時のように三人で語り合いたい。
全部全部、できない。私は彼らを見ていることしか、できることはない。
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籠球(プロフ) - スーディンさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです。よろしければ、続編の方でも応援よろしくお願いします！ (2017年8月17日 0時) (
レス) id: a6bccb531e (このIDを非表示/違反報告)
スーディン - 楽しく読ませてもらっています！ (2017年8月16日 21時) (レス) id: b99a23d97e (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» わわ、またまたコメントありがとうございます！一人称については、本当ですね。気づきませんでした…ご指摘ありがとうございます！修正しておきます！お褒めの言葉も、凄く嬉しいです…！よろしければこれからも応援よろしくお願いします！ (2017年8月10日 5時) (レス) id: c62e084d94 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - またまたお邪魔しますー。戦闘シーンとか「明日を求めて」→「明日を求めた」とか本当かっこいいです…!ところで、ページ35のレムの台詞の一人称が私になっていて、誰かを明かしたくないのであれば主語を省略すると良いと思います(上からみたいですみません) (2017年8月10日 5時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - Mさむさん» コメントありがとうございます！お褒めのお言葉、凄く嬉しいです…！確かに、陣営によっては書く必要のない章も出てきますよね。エミリア陣営は原作と同じ視点から物語を書けるので、恐らく最も書きやすいと思います。小説の更新、頑張ってください！応援してます！ (2017年6月25日 16時) (レス) id: 6a9b5f0fc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏みかん | 作成日時：2017年5月6日 20時
