『夜の忠告』 ページ11
スバルが屋敷に来てから三日目。
遠目に彼の働く姿を見ていたが、想像以上に彼は家事技能が低いようだ。
料理をすれば包丁で指を切り、皿を割り、掃除をすれば滑って床に頭から激突。洗濯をする時なんて真っ赤になりながら鼻息を荒くしているものだから、よくこれで働きたいなどと言えたなと、溜息をついてしまう。
スバルは仕事の合間に時間を見つけて、エミリアへのアプローチに尽力しているため、この数日、Aとはほとんど会話をしていない。
「今日の夜、部屋で待ってて」
「…ぱーどぅん?」
そんな彼女からの唐突な誘いに、スバルがそう反応してしまうのも仕方がないことと言えた。
*
夜になり、スバルは部屋でベッドを整えながら、風呂上りの格好でぶつぶつと自制の言葉を唱えていた。
「落ち着け落ち着け、深い意味はない…。あいつが、そういうことをするとは思えない。俺の心はいつだってエミリアたんだけのもの…」
「スバル、入るよー」
「はぅっ!?」
短いノックと、そんな声にスバルの体がびくりと跳ねる。
その反応に薄く笑いながら、風呂上がりで髪を下ろし、薄っすらと頰を赤く染めたAが部屋に入ってくる。
「へー、以外に綺麗にしてるんだ」
「ま、まあな?だ、男児たるもの、いつでも衛生的にを心がけてるし?今日だって隅々まで体洗ったし?」
「いやそれは聞いてないけど。まあいいや、今日ここに来たのはちょっと用事があってね」
ボスンとベッドに腰掛け、悠々と足を組むA。
寝巻きのワンピースからちらりと白い太ももが見えて、その姿はどこか艶っぽい。
「そのね、言いにくいんだけど…スバル、多分そろそろ死ぬよ」
「…は?」
夜中に年頃の男子と女子が二人きり。そのシチュエーションに顔を赤くしていたスバルが、唐突なその忠告に間抜けた声を出す。
屋敷で、穏当な生活を送っている今の状況。一体どこに死の気配があるというのか。
「王都での一件で、私はスバルに迫る死の気配を敏感に感じ取れるようになったみたいでね。今はまだ薄いけど、スバルがここに来た時からは確実に、その気配が濃くなってる」
「…いや、待て。そんな事急に言われて、信じられるわけが」
「別に信じなくてもいいけどね。どうせ死んでも戻るんだし。でも、また君は近いうちに運命を変えなきゃいけなくなる」
驚愕におし黙るスバルに、内容とは似つかわしくない、軽い口調で言葉をかける。
「だからせいぜい頑張ってって、それだけ言いにきた」
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籠球(プロフ) - スーディンさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです。よろしければ、続編の方でも応援よろしくお願いします! (2017年8月17日 0時) (レス) id: a6bccb531e (このIDを非表示/違反報告)
スーディン - 楽しく読ませてもらっています! (2017年8月16日 21時) (レス) id: b99a23d97e (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» わわ、またまたコメントありがとうございます!一人称については、本当ですね。気づきませんでした…ご指摘ありがとうございます!修正しておきます!お褒めの言葉も、凄く嬉しいです…!よろしければこれからも応援よろしくお願いします! (2017年8月10日 5時) (レス) id: c62e084d94 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - またまたお邪魔しますー。戦闘シーンとか「明日を求めて」→「明日を求めた」とか本当かっこいいです…!ところで、ページ35のレムの台詞の一人称が私になっていて、誰かを明かしたくないのであれば主語を省略すると良いと思います(上からみたいですみません) (2017年8月10日 5時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
籠球(プロフ) - Mさむさん» コメントありがとうございます!お褒めのお言葉、凄く嬉しいです…!確かに、陣営によっては書く必要のない章も出てきますよね。エミリア陣営は原作と同じ視点から物語を書けるので、恐らく最も書きやすいと思います。小説の更新、頑張ってください!応援してます! (2017年6月25日 16時) (レス) id: 6a9b5f0fc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏みかん | 作成日時:2017年5月6日 20時