『心の傷』2 ページ2
抑揚のない声で言葉を重ねるスバルを、大声で怒鳴る。部屋の空気がビリビリと震えた。
「そんなわけない。スバルは、自分で気づいてないだけでどれだけ禍々しいものを飼っているのか分かってないんだよ。『それ』と私が繋がってるなんて、恐ろしくて、嘘でもそんなこと言わないよ。スバルの力の事は本当に分からないし、私は絶対にスバルを殺そうとなんてしない」
ぎっと鋭くスバルを睨みつければ、スバルはしばし呆然とした後、がっくりと首を垂れた。
「…分かってる、悪い、お前がそういう奴じゃないってのは、俺だってもう分かってるんだ。前回、ほとんど覚えてねえけど…俺を守って戦ってたの、お前だろ？分かってんだよ。でも、もう何を信じればいいのかが分からねえ」
混乱して、消耗しきっている。
大好きだと思っていた相手に殺されて、裏切られて、信じるべきものを見失っている。
磨耗して、擦り切れて、見るべきものを見失っている。
「俺、何を信じればいいんだろうな」
スバルの目はじっと手元で握りしめたシーツを見つめたまま、その声はあまりに弱々しい。
「私を信じればいいんじゃない」
俯いてしまって見えない顔の代わりに、珍しい黒髪に覆われた頭を見ながらはっきりと答える。
「私でも、エミリアでもパックでも。あの二人は信じられるよ。私が言わなくても、スバルだって分かるでしょ？スバル、混乱して視野が狭くなってるんだよ。案外信じれる人っていうのはいるもんだよ」
スバルは顔を上げず、じっとしている。
「それに、ラムも、レムも、ロズワール…はちょっと私も苦手だから何とも言えないけど。根っからの悪い人じゃない。行動には理由がある。それも、スバルは知ってるでしょ？」
スバルは顔を上げない。
「スバル、一人じゃなくて良かったね。他の誰もがスバルの事を覚えてなくても、私はスバルを覚えてる。スバルの生きた世界を知っている」
「一人じゃないんだよ。手伝える事は少ないけど、一人より二人の方がさ、心強いじゃん」
「休みたかったら休みなよ。そのぶん、私は働ける。スバルの折れた心が癒えるまで、私が代わりに背負えるよ」
「勝手に自分だけで完結しないでよ。私がいるんだから」
白いシーツに、ぽたりと小さなシミができた。
スバルは顔を上げない。言葉を発さない。でも、シーツに落ちる雫はぽたりぽたりとシミを作り、広げていく。
「…ありがとう」
小さく空気を震わした声は、風に溶けて、消えた。
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みかんじゅ〜す(プロフ) - とても面白かったです！！完結となっていますが更新をなさらないと言うことですか？続きが楽しみなので更新されるかされないかだけ教えていただけませんか？ (2021年12月28日 20時) (
レス) id: 30ce22080f (このIDを非表示/違反報告)
わた。 - 更新はもうされませんか…？泣 ずっと待ってます。 (2020年9月22日 21時) (レス) id: 79fafdb344 (このIDを非表示/違反報告)
なな - めちゃ面白いです！見るの止まらなくて一気に読んじゃいました笑更新楽しみにしてます！ (2018年12月28日 23時) (レス) id: 55efb554d6 (このIDを非表示/違反報告)
団子 - はじめまして！読ませていただきました。率直にとても好きな作品です！特にスバルと夢主の関係がすごく好きです。挿絵の方も素敵で見させてもらっています。これからもささやかながら応援してます！ (2018年8月31日 22時) (レス) id: 655a142b18 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん(プロフ) - 美緒さん» コメントありがとうございます！レムとの戦闘は、双方ともに相手に怪我させないように配慮してたのであまり参考になりません。近接戦となれば、本気を出してロズワールといい勝負ができるかどうか…。まあまあ強い方ではありますが、対人はあまり得意ではありません。 (2018年3月25日 2時) (レス) id: a6bccb531e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏みかん | 作成日時：2017年8月13日 23時
