AU短編集

＊花言葉(murder) ページ4

「はい、サンズ」

アネモネの花を俺に向かって差し出す。受け取るのが嫌でじっと顔を見ていたらずいっと目の前に持ってきた。これ以上近付けられたくないので渋々受けとる。兄弟が隣で殺せと言ってくる。俺だって殺したい。なのに、いつも瀕死にするだけで終わる。何故か大嫌いなこいつは殺せない。大好きな兄弟は殺せたのに。いや、兄弟は死んでない。だって今も俺の隣にいるんだもんな。そうだ、兄弟は死んでない、俺は兄弟を殺してなんか…いや、今は考えないでおこう。今は目の前にいるこいつに集中しよう。

「どうして俺に構うんだ？」

今の言葉は本心だ。俺が冷たくあしらっても攻撃して傷つけても、こいつは毎回花を持って俺の所に来る。何時から花を持って俺の所に来るようになったのかはもう覚えていない。それくらい昔から花を持ってくるようになった。

「サンズが好きだから」

他の奴はこいつの笑顔と台詞で、一瞬で惚れるだろう。実際、幾らかのモンスターはこいつに惚れていた。だが俺はそいつらとは違う。その笑顔が嫌で嫌で仕方ない。それに好きという言葉にも吐き気を感じて思わず睨み付ける。それでもこいつは笑顔を絶やさず、何事もなかったかのように手を差し出す。それは俺が花を持ってきているのが分かっているからだろう。俺も毎日こいつに花をあげている。ため息をついてラッピングも何もされていない1輪のスノードロップを差し出す。

「ほらよ」

俺があげる花は、こいつみたいに愛してるだの信じてるだの、綺麗な花言葉なんかじゃない。偽りの愛や裏切り、敵意などといったドス黒いものだ。今回なんて、あなたの死を望みますだぜ？普通、こんなの貰っても嬉しくないだろ。なのにこいつはありがとうと言って嬉しそうにそれを受け取る。なんて物好きだ。俺が言うのもなんだが、こいつは狂っている。

「ねぇサンズ、久しぶりに名前で呼んでほしいな」

そう言われ嫌だと断りそうになったが、断るときっとめんどうな事になる。こいつは意外と頑固だからな。それに普通に呼ぶだけじゃこいつはもう一回、と何度も言ってくるだろう。そうなるとこいつと過ごす時間が増える。それだけは嫌だ。こいつと過ごす時間を減らす為。そう自分に言い聞かせAを引き寄せ、耳元で囁く。

「A」

これでいいか？そう言い横目で顔を見ると、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに下を見ていた。見たこともない表情に、何故か俺まで真っ赤になった。

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