234.駄目…なの ページ4
「はぁ〜、今日も疲れたなぁ。」
二人きりの部屋でう〜ん、と伸びをしながらエンマくんは大きな欠伸をする。
「今日もお疲れ様、エンマくん。」
するとすぐに私の方を向き、ニパッと笑い掛けてくれた。
「おぅ。お前もお疲れ。」
そんな当たり前の会話が心地よく響く。
私が就寝準備をしていると後ろからギュッと抱き締められた。
「疲れた時にはやっぱ甘いモンだよな〜。」
「え…、きゃっ。」
トサッと背中に柔らかい感触がして、見上げる先には何か企んだような瞳のエンマくんがいた。
「さ〜て、極上の糖分補給！」
「ん！…んん…。」
突然の甘いキスに思わず酔いしれそうになる。
そんな時、耳の奥で今朝聞いたエンマくんの言葉が甦った。
――『まぁ、近いうちにAにも伝えるつもりだけどな…。』
それから私はエンマくんの胸を押して遠ざける。
「ん？…どうかしたか？」
「……。」
不思議そうな顔で覗き込むエンマくんの視線を真っ直ぐに見れない。
私は目を逸らせたまま小さく呟いた。
「なんかね…、今日は何かあったのかなー、って…。」
そう言って目を泳がせている私に怪訝そうな視線を向けながらエンマくんは再び顔を近付けてくる。
「特になにもないぜ。いつも通りぬらりは小言ばかり言うしよ。…むぐ。」
近付いてきた唇を手で押し返すと、途端に不機嫌そうな声がした。
「なんだよ。いやなのか？」
「いや…じゃないけど…。」
「『けど』…？」
「…駄目、なの…。」
そのまま黙りこくってしまった私にエンマくんんは体を起こして頭を掻く。
「…なんかあったのか？」
「なにも…ない、よ…。」
それでもまだ目線を合わせようとしない私にエンマくんは大きな溜息をついた。
「何があったか知らねぇが、あんまり抱え込むんじゃねぇぞ。」
それから私の横にゴロンと横たわるとポンポンとベッドを叩く。
「ほれ、おいで…A。」
私はしばらく躊躇した後、おずおずとエンマくんに近付いた。
途端にギュッと抱き締められる。
その温かさに目頭が熱くなった。
(ごめん…なさい。出来損ないの私で…。)
その言葉は声にならず私の心の中に消えていく。
静かな夜の闇が私達を取り込んでいくようで、なんだか恐ろしく感じた。
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湖月さくら(プロフ) - 愛鬼さん» 愛鬼様。お久しぶりです。ずっとご覧くださいましてありがとうございます。しばらく更新が出来ませんでしたが、これからものんびりと続けていこうと思っています。どうぞご覧くださいね。これからもよろしくお願いします。 (2021年1月13日 22時) (
レス) id: 3bf6c87812 (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - Epiphyllumさん» Epiphyllum様。初めまして。ご覧くださいましてありがとうございます。恋人ｼﾘｰｽﾞから読んでくださったのですね。跡継ぎ問題、今はこのままでしょうがいつか二人の子どもも描きたいなぁ。ケータくん達との絡みまで続けられたら良いのですが。よろしくお願いします。 (2021年1月13日 22時) (レス) id: 3bf6c87812 (このIDを非表示/違反報告)
愛鬼 - 実はこれ数年前から見てます！好きです！頑張って下さい！ (2020年12月30日 3時) (レス) id: 0f20c8237d (このIDを非表示/違反報告)
愛鬼 - 続きを・・・続きをお恵み下さい・・・！ (2020年12月30日 3時) (レス) id: 0f20c8237d (このIDを非表示/違反報告)
Epiphyllum - 本日恋人編からここまで全部読みました！本当に好きですｯ!エンマくんも可愛いし正直跡継ぎとか気になります！更新頑張ってください！なんかそのうちケータくんたちとも関わってくれたら嬉しいです！ (2020年12月28日 22時) (レス) id: 6812348321 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湖月さくら | 作成日時：2020年4月5日 22時
