226.聞こえない心の声 ページ22
その夜、部屋に帰ってきたエンマくんは私の表情を見て何があったのか、と聞いてきた。
しかしあの女官との約束により何も話せないでいる私の心を悟ったのか、エンマくんはそれ以上無理に追及してはこなかった。
ベッドに入ってからも今日の出来事が目に焼き付いて体の震えが止まらない。
それでも私はあの女官の言葉を必死で考えていた。
(『タイムリミットまであと3時間弱』って、あれからもう2時間も経過しているんだから残りはあと1時間よね。それまでに薬を解かないと私は…。)
そこまで考えて頭をプルプル横に振る私を、エンマくんは怪訝そうに見つめていた。
「A、…さっきからお前、変だぞ?何隠してんだよ。」
そう言われても私は何も言う事が出来ない。
頭の中で薬を解く方法を必死で考えながらも目頭がだんだんと熱くなってきた。
「Aっ!」
エンマくんに呼ばれハッとした私は彼の方を向く。
するとエンマくんは心配そうに眉を顰めていた。
「言いたくないなら言わなくてもいい。言いたくなったら言えばいい。でも忘れるな。お前は一人じゃない。オレがそばについてる。どんな事をしてもお前を守る。」
ガバリと肩を掴まれて思わず堪え切れなくなった涙がポロリと零れ落ちる。
それでも何も言おうとしない私の目尻をエンマくんは優しく拭ってくれた。
その手がとても優しくて涙は益々止まらなくなる。
触れられる事が相手によってこんなにも違うだなんて、初めて気付いた。
『エンマくん…、好き。』
「…そんなのずっと前から知っている。」
唇の動きを読み取って私の言葉をわかってくれるエンマくんに、もどかしさだけが募る。
『好き、…どうしようもないくらい好き…なの。』
泣きながら声にならない言葉をぶつける。
今この言葉を自分の声で伝えられない事が苦しかった。
『好き…、大好き…。』
「わかってる。」
声にならない言葉を必死で繰り返す。
するとエンマくんは照れくさそうに眉を下げて笑った。
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湖月さくら(プロフ) - なっちゃさん» なっちゃ様。いつもありがとうございます。そんな風に言っていただけるだなんて嬉しいです。想い合っていても大切にしてても時に苦しい時もやってきます。大切なのはそれをどうやって乗り越えていけるか、なのかもしれません。これからも頑張ります。 (2019年12月31日 7時) (レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃ - この夫婦みたいな幸せな家庭つくれたら確かにエンマくんみたいになっちゃうわw なんかうらやまし (2019年12月26日 19時) (レス) id: 7e94d5d2da (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - アミュレットさん» アミュレット様。いつもありがとうございます。女郎蜘蛛、可愛いですよね。この作品の女郎蜘蛛も気に入っていただけたのなら嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 12時) (レス) id: 822a971f0a (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット(プロフ) - 女郎蜘蛛、自分も結構好きです(^^) (2019年1月27日 20時) (レス) id: b7b163701b (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - あっきー like u very muchさん» あっきー like u very much様。こちらこそいつもありがとうございます。楽しんでいただけるよう今年も頑張ります。どうぞのんびりとお待ちくださいね。 (2019年1月12日 16時) (レス) id: 822a971f0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湖月さくら | 作成日時:2018年9月3日 2時