207.謎の女官と小瓶 ページ3
(またエンマくんに心配かけちゃった…。)
眠い目を擦りながら重い足取りで朝の廊下を歩く。
外の天気は快晴なのに私の心はドンヨリと曇っていた。
あの日から毎晩見る悪夢。
それは時に、弟の航ちゃんが闇に襲われる夢だったり、時にエンマくんや親しい人たちに置いて行かれる夢だったりと私にとって衝撃的なものばかりだった。
夢にうなされる度、隣で寝ているエンマくんは私を起こしてくれ、いつも心配そうに見つめる。
それが本当に申し訳なくて私の心は益々沈んでいった。
(『大丈夫』なんて言っても大丈夫じゃない事くらい、エンマくんにはバレバレよね。)
うなされている私を起こした後、エンマくんはいつも手加減なく行動を開始する。
それは私が気を失うまで行われ、お陰で私はそこから先はうなされる事なく朝まで眠れていた。
(エンマくんのソレはきっと私の為にしている事なのよね…。)
毎晩繰り返される悪夢と、それを打ち消すかのような甘い激しいやりとりに私の体は段々と疲れをみせていった。
(私がこんなに疲れてるんだもの。それ以上に動いているエンマくんはもっと疲れているわよね。)
そんな風にエンマくんに対して申し訳なく想いながらも、毎晩繰り広げられる愛情のやり取りにほんのりと心が温かくなっているのも事実だった。
(でもこのままじゃエンマくんも疲れちゃう…。自分の事だもの、自分でなんとかしなくちゃ…。でもどうやって…？)
う〜んと唸りながら廊下で立ち止まっている私の背中に、聞きなれない女性の声が響く。
「A様ですね？」
「ん？」
振り返るとそこには真っ黒い服に身を包んだ見知らぬ女官が立っていた。
女官は伏せていた顔を上げると静かに口を開く。
「最近なにやら夢見が悪いと伺いました。もしよろしければこちらをお使いください。」
そう言って差し出された小瓶を不思議そうに見つめているとその女官はグイッと私にその小瓶を押し付けた。
「あなた様は次期エンマ大王様を宿す大切な御身。どうぞご自愛くださいますよう…。」
それから女官はススッと後ろに下がると音もなく去って行く。
一人残された私は手の中の小瓶と女官の去った方向を見つめながら大きな溜息をついた。
――――
突然渡された小瓶。
さて、何が起きるのか…。
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湖月さくら(プロフ) - なっちゃさん» なっちゃ様。いつもありがとうございます。そんな風に言っていただけるだなんて嬉しいです。想い合っていても大切にしてても時に苦しい時もやってきます。大切なのはそれをどうやって乗り越えていけるか、なのかもしれません。これからも頑張ります。 (2019年12月31日 7時) (
レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃ - この夫婦みたいな幸せな家庭つくれたら確かにエンマくんみたいになっちゃうわｗ なんかうらやまし (2019年12月26日 19時) (レス) id: 7e94d5d2da (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - アミュレットさん» アミュレット様。いつもありがとうございます。女郎蜘蛛、可愛いですよね。この作品の女郎蜘蛛も気に入っていただけたのなら嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2019年1月29日 12時) (レス) id: 822a971f0a (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット(プロフ) - 女郎蜘蛛、自分も結構好きです(^^) (2019年1月27日 20時) (レス) id: b7b163701b (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - あっきー like u very muchさん» あっきー like u very much様。こちらこそいつもありがとうございます。楽しんでいただけるよう今年も頑張ります。どうぞのんびりとお待ちくださいね。 (2019年1月12日 16時) (レス) id: 822a971f0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湖月さくら | 作成日時：2018年9月3日 2時
