189.暗黒の燻り ページ10
「もうこんな時間だ、帰らないと。」
少しだけ元気を取り戻した航ちゃんは、そう言うと私達に向かってペコリとお辞儀をする。
するとその時、エンマくんは何かに気付いたようにピクリと反応した。
「…最近、周りでおかしな事が起こらなかったか？」
少し眉間に皺を寄せ真剣に尋ねるエンマくんに航ちゃんはキョトンとした後、考え込む。
「そうですね、…特には。しいて上げるのなら、最近周りが皆元気ないですね。」
「どんな風に？」
エンマくんが詳しく尋ねると、航ちゃんは思い出すかのように語り出す。
「なんか、後ろ向きというかふさぎがちというか…。人生に絶望、とまではいきませんが毎日誰かが落ち込んでいます。」
落ち込むとはさっきの航ちゃんのようにマイナス思考となってしまう事を言うのだろうか。
航ちゃんの話を静かに聞いていたエンマくんは、そうか、と言うとにっこり笑顔となった。
「つまらない事を聞いたな。」
「いえ、大丈夫です。」
エンマくんにつられニコッと笑顔を返す航ちゃんに私は少しホッと胸を撫で下ろす。
そんな私を見てエンマくんは優しい目を向けた。
「どうしても辛くなったらここに来るといい。きっと気持ちが楽になるはずだ。」
それを聞いて航ちゃんは静かに頷く。
「そうですね。姉ちゃんなら何か助言をしてくれるのかもしれません。」
そう言って航ちゃんは安心したように微笑むと手を振って別れを告げる。
夕日に向かって歩いていく航ちゃんを見送りながらエンマくんは難しい顔をして前を見つめていた。
「エンマくん…？」
そっと声を掛けるとエンマくんは柔らかく微笑みながら私の頭をポンとたたく。
「さて、オレ達も帰るか。」
「…うん。」
いつの間にか夜の帳の落ちかかった空が私の不安をより一層強めているように感じた。
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湖月さくら(プロフ) - 蜜璃さん» 蜜璃様。初めまして。ご覧くださいましてありがとうございます。夢主ちゃんが可愛いと言っていただけてとても嬉しいです。音楽を作っていらっしゃるのですね。作曲の合間にも楽しんでいただけるようにこれからも頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。 (2020年2月3日 16時) (
レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
蜜璃 - 湖月さくらさんの作品初めて見たんですけど、夢主ちゃんが可愛いです 私、ボカロ曲を作曲したりしていて、作曲の途中に読んでます。 (2020年1月30日 6時) (レス) id: 05b653ea5e (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - なっちゃさん» なっちゃ様。いつもありがとうございます。生と死はすべての者に平等で、時に冷酷なのかも知れません。だから私はやはり怖いです。それでも日々大切に生きて行けたら…、いつか幸せがなんなのか分かるのかもしれませんね。難しい問題です…。 (2019年12月31日 7時) (レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃ - なんか正直しぬのも怖くないかもな だってしぬことは同時に次へ進むことなんだと思うし。なぜ選ばれ、生を受けたのかはわからないけど霊体の状態がわたしたちの本当の姿なのではないかと時折思う (2019年12月26日 19時) (レス) id: 7e94d5d2da (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - 彩雪姫さん» 彩雪姫様。初めまして。ご覧いただきましてありがとうございます。楽しんでいただけたようで嬉しいです。公式のエンマ大王様のように格好良く描けたら良いのですが…。頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2018年10月4日 12時) (レス) id: 695ea5332b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湖月さくら | 作成日時：2018年6月6日 1時
