187.仮初めの現世 ページ8
「久し振りにこちらへ来たのでお墓参りしようと思って…。」
そこまで言って私は花もお線香も持たずに何を墓参りだとはたと気づく。
そんな事には触れずに航ちゃんはにこやかにお礼を述べた。
「そうですか。それはありがとうございます。姉もきっと喜んでいると思います。」
眉を下げて少し寂しそうに話す航ちゃんに今すぐ名乗り出たい衝動に駆られる。
そんな気持ちをグッと押さえ、私はそっとお墓に向かって手を合わせた。
――――
お墓参りの帰り道、夕焼けの中を三人、トボトボとゆっくり歩く。
沈黙に耐えかねたのか、前を行く航ちゃんがそっとこちらを振り返った。
「姉とは仲が良かったんですか?」
そう聞かれなんと答えていいのか思わず考え込む。
すると隣を歩くエンマくんが代わりに答えてくれた。
「あぁ。いつも優しく笑顔で、思いやりのある素敵な人だった。…頑固者だが。」
「エ…円ちゃん!」
エンマくんの言葉に航ちゃんは一瞬呆気にとられたが、すぐにプッと吹き出した。
「そぅそぅ。曲がった事は嫌いで、こうと決めたら梃子でも動かない。…ホント、頑固者でしたよ。」
航ちゃんはあはは…と笑った後急に静かになる。
そしてゆっくりと話し始めた。
「さっきお墓の前で
唇をキュッと噛みしめ何かに耐えているようなしぐさの航ちゃんに思わず駆け寄りたくなる。
すると航ちゃんは眉を下げて自嘲的に笑った。
「いつだって笑顔で明るくて…。自分の方が辛いのにいつもボクの心配ばかりして…。ホントお人よしですよね。」
寂しそうに苦笑する航ちゃんに私は何も言葉が出ない。
すると航ちゃんは切なそうに夕焼け空を見上げると、空に浮かぶ赤い雲を見つめた。
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湖月さくら(プロフ) - 蜜璃さん» 蜜璃様。初めまして。ご覧くださいましてありがとうございます。夢主ちゃんが可愛いと言っていただけてとても嬉しいです。音楽を作っていらっしゃるのですね。作曲の合間にも楽しんでいただけるようにこれからも頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。 (2020年2月3日 16時) (レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
蜜璃 - 湖月さくらさんの作品初めて見たんですけど、夢主ちゃんが可愛いです 私、ボカロ曲を作曲したりしていて、作曲の途中に読んでます。 (2020年1月30日 6時) (レス) id: 05b653ea5e (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - なっちゃさん» なっちゃ様。いつもありがとうございます。生と死はすべての者に平等で、時に冷酷なのかも知れません。だから私はやはり怖いです。それでも日々大切に生きて行けたら…、いつか幸せがなんなのか分かるのかもしれませんね。難しい問題です…。 (2019年12月31日 7時) (レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃ - なんか正直しぬのも怖くないかもな だってしぬことは同時に次へ進むことなんだと思うし。なぜ選ばれ、生を受けたのかはわからないけど霊体の状態がわたしたちの本当の姿なのではないかと時折思う (2019年12月26日 19時) (レス) id: 7e94d5d2da (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - 彩雪姫さん» 彩雪姫様。初めまして。ご覧いただきましてありがとうございます。楽しんでいただけたようで嬉しいです。公式のエンマ大王様のように格好良く描けたら良いのですが…。頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2018年10月4日 12時) (レス) id: 695ea5332b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湖月さくら | 作成日時:2018年6月6日 1時