186.昔話を奏でて ページ7
夕暮れ時、自分のお墓に向かってそっと手を合わせる。
そんな私の横でエンマくんはじっと前を見つめていた。
「自分のお墓にお参りだなんて、なんか変な感じ。」
そう言ってゆっくりと立ち上がり、私も同じように墓石を見つめる。
ここに来たら自分はどうなってしまうのかずっと不安に思っていたが、考えていたよりも気持ちは重くはなかった。
「…やっぱり私、…この世にはいない人間なのね。」
ポツリと呟いた言葉が夕暮れの赤い空へと消えていく。
慰めるでもなく励ますでもなく、ずっとそばに寄り添っていてくれるエンマくんの気持ちが嬉しかった。
「…満足したか?」
ふとすると聞き逃してしまいそうな程小さな声でエンマくんが尋ねる。
私はしばらく俯いていた顔をパッと上げるとにっこりと笑った。
「うん。もう大満足!」
少しおどけてそう言うとエンマくんは柔らかく口元を緩めた。
「ぬらりさんも心配してるだろうし。…もうそろそろ帰…。」
「ねぇちゃん?」
突然背後から掛けられた懐かしい声に私は一瞬にして固まる。
振り返らなくてもその声の主は誰なのか手に取るように分かった。
「ねぇちゃん…なのか?」
恐る恐る震える声で問い掛けられる言葉に、私はギュッと目を瞑るとゆっくり振り返った。
「いいえ、人違いでしょう。私には弟はいませんので。」
にっこりと微笑んだ目の前に、懐かしい人物が驚いた顔をして立っている。
そう、あの頃の面影をわずかに残し、大きく成長した姿の私の弟が…。
弟は茫然と私の顔を見つめた後、ハッと我に返ると申し訳なさそうに頭を掻いた。
「すみません。姉と似ている気がしたので…。」
人違いと理解したのだろうか。
弟はぺこりと頭を下げると自己紹介を始めた。
「ボクは
キリッとした物言いに時の流れを感じ、目頭が熱くなる。
それを悟られないように私はにっこりと微笑んだ。
「私は
「そうですか。」
納得したように微笑む航ちゃんに私はニコニコと笑い掛ける。
笑っていなければ今にも涙が零れ落ちてしまいそうだった。
ーーー
懐かしい人との再会。
どうなってしまうのか。
お楽しみに。
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湖月さくら(プロフ) - 蜜璃さん» 蜜璃様。初めまして。ご覧くださいましてありがとうございます。夢主ちゃんが可愛いと言っていただけてとても嬉しいです。音楽を作っていらっしゃるのですね。作曲の合間にも楽しんでいただけるようにこれからも頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。 (2020年2月3日 16時) (レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
蜜璃 - 湖月さくらさんの作品初めて見たんですけど、夢主ちゃんが可愛いです 私、ボカロ曲を作曲したりしていて、作曲の途中に読んでます。 (2020年1月30日 6時) (レス) id: 05b653ea5e (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - なっちゃさん» なっちゃ様。いつもありがとうございます。生と死はすべての者に平等で、時に冷酷なのかも知れません。だから私はやはり怖いです。それでも日々大切に生きて行けたら…、いつか幸せがなんなのか分かるのかもしれませんね。難しい問題です…。 (2019年12月31日 7時) (レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃ - なんか正直しぬのも怖くないかもな だってしぬことは同時に次へ進むことなんだと思うし。なぜ選ばれ、生を受けたのかはわからないけど霊体の状態がわたしたちの本当の姿なのではないかと時折思う (2019年12月26日 19時) (レス) id: 7e94d5d2da (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - 彩雪姫さん» 彩雪姫様。初めまして。ご覧いただきましてありがとうございます。楽しんでいただけたようで嬉しいです。公式のエンマ大王様のように格好良く描けたら良いのですが…。頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2018年10月4日 12時) (レス) id: 695ea5332b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湖月さくら | 作成日時:2018年6月6日 1時