202.職場的恋愛事情 ページ23
静かな部屋に二人きり。
横を見ると隣のAはスラスラと筆を走らせている。
その綺麗な横顔をオレはそっと眺めていた。
ぬらりに言い渡された本日分の仕事。
それを手伝いながらAは黙々と作業を続ける。
時折ハラリと髪が垂れ、それを耳に掛ける度、Aからは甘い香りが漂う。
そんな空間でオレは仕事に集中出来ずにいた。
真剣に書類を見つめる横顔。
キュッと結ばれたピンク色の唇。
手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、オレを映さないその瞳がなんとなく悔しかった。
「ん？…なぁに？もう終わったの？」
ようやくオレの視線に気付いたAがこちらを振り向き顔を緩める。
そんな些細な事に胸がドキンと高鳴った。
「いや、終わらん。」
「『終わらん』って…。さっきから手が止まってるからもう終わったのかと思った。もぉ駄目じゃない。」
そう言いながら再び書類に目を向けるAにムッとして、オレは先程まで考えていた言葉を口にした。
「なぁ…キスしたい。」
「え？」
途端に顔を上げ、パァッと赤くなるAが愛おしい。
オレはにやりと口元を緩めながら同じ言葉を繰り返した。
「なぁ…キスしたい。」
「…っ。」
顔を真っ赤に染め上げてAはガタンと椅子から立ち上がると慌てたように喋り出す。
「なっ、何言ってるの！？いつもはそんな許可なんて取らずに勝手にキスするくせに。…じゃなくて、ここは執務室で今はお仕事中でしょ！？冗談言ってないで早く仕事を終わらせないと！」
Aのそんな真面目な回答に思わずカチンときて眉間に皺を寄せる。
「キスしたいキスしたいキスしたい…！」
駄々っ子のように同じ台詞を繰り返すオレに、Aは呆れたような顔をすると落ち着いた様子で椅子に腰を下ろす。
そして何事もなかったかのように仕事を再開した。
ラッキーアルファベット
X
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 128人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湖月さくら(プロフ) - 蜜璃さん» 蜜璃様。初めまして。ご覧くださいましてありがとうございます。夢主ちゃんが可愛いと言っていただけてとても嬉しいです。音楽を作っていらっしゃるのですね。作曲の合間にも楽しんでいただけるようにこれからも頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。 (2020年2月3日 16時) (
レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
蜜璃 - 湖月さくらさんの作品初めて見たんですけど、夢主ちゃんが可愛いです 私、ボカロ曲を作曲したりしていて、作曲の途中に読んでます。 (2020年1月30日 6時) (レス) id: 05b653ea5e (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - なっちゃさん» なっちゃ様。いつもありがとうございます。生と死はすべての者に平等で、時に冷酷なのかも知れません。だから私はやはり怖いです。それでも日々大切に生きて行けたら…、いつか幸せがなんなのか分かるのかもしれませんね。難しい問題です…。 (2019年12月31日 7時) (レス) id: 820cedf0c2 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃ - なんか正直しぬのも怖くないかもな だってしぬことは同時に次へ進むことなんだと思うし。なぜ選ばれ、生を受けたのかはわからないけど霊体の状態がわたしたちの本当の姿なのではないかと時折思う (2019年12月26日 19時) (レス) id: 7e94d5d2da (このIDを非表示/違反報告)
湖月さくら(プロフ) - 彩雪姫さん» 彩雪姫様。初めまして。ご覧いただきましてありがとうございます。楽しんでいただけたようで嬉しいです。公式のエンマ大王様のように格好良く描けたら良いのですが…。頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2018年10月4日 12時) (レス) id: 695ea5332b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湖月さくら | 作成日時：2018年6月6日 1時
