エンマ大王の恋人 vol.15【妖怪ウォッチ】

344.ザルな旦那様 ページ11

「な、なんで飲んじゃうの〜。」

「なんでって…。残したらもったいねぇだろ？」

うっ、と口籠ったAは赤い顔のまま俯く。

「…なによ、この恥ずかしさハンパない感じ…。」

「なんでもいいから早く注いでくれ。三々九度なんだから、もう一回オレが飲むんだよ。」

渋々とAが注ぎ入れた酒をオレは美味しそうに飲み干す。

照れて困っているAも可愛いなとか、もし酔わせたらどうなるんだろうとか、オレはフワフワとした頭の中でそんな事を考えていた。

二つの盃をそれぞれ三度ずつ酌み交わしていくうちに、ついには最後の盃となった。

「それにしてもそんなにお酒を飲んで、酔わないの？」

「うん？」

一番大きな盃に注がれた酒をオレがグビッと飲み干すと、Aは怪訝そうな顔で尋ねた。

「だってもう何度もこうしてお酒を飲んでいるのに、エンマくんってば全然顔色も変わらないんだもん。私なんてお酒の香りだけで頭がくらくらしそうなのに…。」

悔しそうに口を尖らすAを見て、オレはフッと笑みを漏らした。

「そりゃ仕方ねぇだろ。経験値の差だ。今日初めて酒を口にしたお前と、ザルのオレとを比べること自体、間違ってるよ。」

「『ザル』？」

飲み干した盃をAに渡しながらオレは静かに頷く。

本人の言う通り、既に酒の香にでもやられたのか、ほんのりと赤みのさした頬が妙に色っぽかった。

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