涙と笑顔の輝く日【卒業限定短編集】

たったの数センチで…2【月島蛍】─うさぎ─ ページ11

「もう平気。本当に大丈夫。」





こんなのきっと気まぐれだ。



今日をすぎればいつかは忘れてしまう。








・








……はず。






大体恋なんて、僕には合わなかったというだけで、凹むことなんて何もない。



「蛍は辛い時いつも慰めてくれて、本当いい後輩だね。」



目線を逸らす。









・








「…好きになった人が蛍だったら、苦しくなんてなかったのにね。」




冗談だって分かってるけど、彼女の横顔がこれまでで一番愛おしく感じた。







・








出口のない海で溺れて。




抜け出しても波に呑まれて。








「僕の彼女がA先輩ですか？…ﾌﾟｯｸｸｸ」


「笑わないでよ！蛍は嫌いでも私は蛍のこと好きなんだから！」






嫌い…ね。

この人を嫌いでいられる自信なんてこれっぽっちもない。








・









「ありがとう。もう行くよ。」

立ち上がって向こうの方を向く。






「じゃあ。」


風に吹かれる彼女の髪が靡く。



桜が別れを囁いた気がした。






どれだけ手を伸ばしてみても届かないから。

欲張って手を伸ばそうなんてしない。




枝を折ったら美しさは数日で消えてしまう。









桜は静かに眺めているだけで良い。





たったそれだけで、









・







・








「……さよなら。」








それだけで十分だ。

─ＥＮＤ─

待ってる。【山口忠】ー沖田杏ー→←たったの数センチで…【月島蛍】─うさぎ─

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