ヨンサン食堂の中 ページ8
「びっくりした。けど…何ともなくて良かった」
転んだ拍子にキッチンにある作業台の角にぶつけて目の横を切ってしまったらしい。
さらに腰も打ってうずくまってる時に私が裏側に来た、そうお祖母ちゃんは話した。
「せっかくご飯を作ってあげようと思ったのに」
「大丈夫だよ、後で外行って買ってくるから」
「そんな、わざわざ休みにしたのに…」
不満そうな顔をしたお祖母ちゃんの傷口に絆創膏を貼ってあげた。
救急箱を元の場所にしまって私は店のキッチンを見回す。
「あんまり覚えてないけど、なんか懐かしい気がする」
「あんたが来たのはまだこれくらいの時だよ？覚えてるもんか」
お祖母ちゃんは腰下に手を翳して私が幼かった頃を思い出しているみたいだ。
「大きくなって。本当に子供は少し会わないと別人のようになる」
「別人かな？あんまり小さい頃と顔は変わらないってよく言われるんだけど」
「そんなことないよ、綺麗になって…私の若い頃そっくり」
思わずそんな軽口に笑った。
お祖母ちゃんとの思い出は大してないんだけど、こうやって話すとやっぱり自分はこの人の孫なんだなって思う。
何となく波長が合うというか。
お母さんからよく私はおばあちゃんと性格が似てるって言ってた意味がよく分かった。
「遺伝って怖いね」
「本当だよ。将来こんな顔になるんだよ…覚えておきな」
その言葉に私がまじまじと見つめるとお祖母ちゃんが小さく笑った。
「疲れただろ？荷物、上に持っていきな」
「うん…………あ」
そういえば荷物と放ったらかしの弟の存在を思い出す。
「やば、力くんのこと店の前に置いてきてたんだ」
「リキ？」
「お祖母ちゃんの家に下宿する子…じゃないの？」
私がそう言うと一瞬考え込んで、すぐに何かを思い出した様な顔。
「あら、忘れたわ。頼まれてたんだわ、いつも来る常連の人に」
「一緒に来たんだよ、飛行機も電車も一緒で」
「へぇ、そうなの」
あんまり驚いた様子もなく、お祖母ちゃんは座っていた丸椅子から腰を上げる。
「日本人なのは知ってるよね？」
「え、そうなの？」
「まさか知らなかったの」
興味のないことにはとことん無関心なのほんと自分を見ている様で苦笑いをした。
「韓国語出来るんだろ？まぁ出来なくてもあんたが居るから良いけど」
「大丈夫そうだよ、語学塾にも通ってるって」
私の説明をろくに聞かずにお祖母ちゃんは店の表側に向かった。
私が居なかったら力くんは今日どうなってたんだろう…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
eng(プロフ) - 依鈴さん» わーありがとうございます！嬉しい！更新もっとがんばります^ ^ (3月3日 3時) (
レス) id: c7224089dc (このIDを非表示/違反報告)
依鈴(プロフ) - すごく面白いです！！毎日更新楽しみにチェックしてます！笑 頑張ってください！ (3月3日 2時) (レス) id: 71a1970ec1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：eng | 作成日時：2024年2月25日 8時
