ヨンサン食堂 ページ7
『ヨンサン食堂』
見上げた看板にはそんなに大きくない文字でそう書かれていた。
お店の入り口には『臨時休業』と韓国語で書かれた紙が貼ってある。
扉を何回かノックしたけれど反応はまだない。
力くんは扉にあるガラス窓に手を翳して店の中を見ようとするけれど何も言わずに黙ったままだった。
「うーん…ちょっと店の裏手に行ってみるかな」
「僕も」
振り返って私の方に向いた力くんを右手で制す。
「大丈夫、ここで待ってて」
もしも表からお祖母ちゃんが出てきた時のことを考えて、すれ違いにならないように私は1人で行くことにした。
お店の横にある路地裏には誰も居なくて、ポツンと座った猫がこっちを見ている。
私は猫に小さく微笑むとそのままお店の裏側へと歩みを進めた。
「こんにちはー…」
韓国語で挨拶をしながら、店の裏手にあるサッシのドアのすりガラス窓から中を伺う。
しばらくぼんやりとした窓の向こうを見つめて見るけれど、でもやっぱり反応はない。
「どうしたのかな…お母さんちゃんと連絡してるよね？」
日本にいる母親に連絡をしようと手元のスマホを見ようとしたその時。
「…あっ…うぅ」
微かに人の声が聞こえる。
スマホから目をまたドアに向ける。
すりガラスの窓の向こうで何かが動いたように見えた。
「…お祖母ちゃん？Aだけど」
「……んー」
返事のような唸り声のような声が聞こえて私はドアノブを握った。
だけど捻ってみても鍵が掛かってて開かない。
「…A？」
「うん、お祖母ちゃん？ここ開けて」
「あー待ちなさい、今」
何かあったのかな？
少し心配しながらお祖母ちゃんの動きを待った。
するとゆっくりとガラスの向こうの影が鮮明になって、ガチャリと鍵が開く音がした。
「待たせたね…、入りな」
「ありがとう、久しぶ…」
開いたドアの向こうにはお祖母ちゃんが居た。
居たけれどその顔は血だらけで…
「え、ちょっ…どうしたの⁈」
慌てて駆け寄ると、私を見て面倒くさそうに手で払う。
「ちょっと転んだんだって…大したことない」
「いや、でも」
「こんなの拭けば何てことないさ」
そう言いながらも腰に手を当てゆっくりと辺りを見回すお祖母ちゃんは動くのが辛そうに見える。
私はもう一度駆け寄ると体を支えて、顔を拭くものを探そうと辺りを見回した。
「あ、あれ使って大丈夫？」
棚の上に畳まれていたタオルを指さすと、お祖母ちゃんは頷いた。
「悪いね、せっかく来たのにいきなりこんな姿見せて」
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eng(プロフ) - 依鈴さん» わーありがとうございます！嬉しい！更新もっとがんばります^ ^ (3月3日 3時) (
レス) id: c7224089dc (このIDを非表示/違反報告)
依鈴(プロフ) - すごく面白いです！！毎日更新楽しみにチェックしてます！笑 頑張ってください！ (3月3日 2時) (レス) id: 71a1970ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eng | 作成日時：2024年2月25日 8時
