アウト・オブ・タクシー ページ6
「今度お昼食べに行くからー」
タクシーのおじさんは終始ニコニコしていて私たちに大きく手を振って去っていった。
「やっと着いた」
「ね」
スーツケースを転がしながら力くんは私の先を行こうとする。
「え、場所知ってるの？」
「ううん」
「ちょい待ち」
そう言って彼の上着の裾を摘んで引っ張る。
勘で行こうとするな。
「地下鉄1号線 龍山駅1番出口より徒歩約10分だって」
「どこどこ」
2人でスマホの画面を見つめる。
地図の上に刺さったピンは方角的に後ろの方だった。
「あっちかな」
「あっ」
「え？」
力くんは私が向いた方向と同じように目を向けると何かを見つけたのか急に声を発する。
「いや、何でも」
「そう？」
その視線の先には横断歩道の前で立ち止まっている背の高い男の人が居た。
男の人はこっちを一瞬見て、でもすぐに視線をまだ赤い信号に向ける。
マスクで隠れているけれど目が大きくて、綺麗な顔してるのは分かる。
それに細身でスタイル良いしモデルみたい。
「ごめん、行こっか」
「うん」
さっきの男の人を横目に、私たちは歩き出す。
その人の後ろを通り過ぎようとした時に不意に目が合った。
「腹減ったーAちゃんはお腹すいてる？」
「すいてる。空港か駅でなんか買えば良かったね」
何だか不審者でも見るようなあまり良い視線ではなかったけれど、早く祖母のところへ行って落ち着きたい気持ちが勝って視線を力くんに戻す。
「お祖母さんとこで食べないの？」
「営業してるか分かんないし、着いていきなりすぐにご飯下さいっていうのもね…」
「えー、めっちゃ期待してたんだけど！」
結局、さっきの男の人は誰だったのか？
力くんは特に何も話さないので私も聞かなかった。
でも背中に視線が刺さっていたような気がする。
目力強めの人、そんな印象だけが残った。
「着いたらなんか買いに行こう、コンビニとかあるでしょ」
「コンビニかー、手作り食べたかった…」
「夜になったら食べらるよ」
「ほんと？」
期待の目に頷いたけれど、発言に責任は持てない。
ほぼ初めての土地だしどこに何があるのかも分からない。
先に韓国に来ている力くんの方が私なんかより詳しいはず。
「そういえば下宿先決まるまでどこにいたの？」
「えっ…会社の空いてる部屋を間借りしてて」
「会社…？もしかして働いてんの？」
「あ、言ってなかったっけ？僕、アイドル事務所の練習生なんだ」
うん、聞いてないよ。びっくりだよ。
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eng(プロフ) - 依鈴さん» わーありがとうございます！嬉しい！更新もっとがんばります^ ^ (3月3日 3時) (
レス) id: c7224089dc (このIDを非表示/違反報告)
依鈴(プロフ) - すごく面白いです！！毎日更新楽しみにチェックしてます！笑 頑張ってください！ (3月3日 2時) (レス) id: 71a1970ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eng | 作成日時：2024年2月25日 8時
