電車に乗った貴公子 ページ45
「あれ、こんにちは」
「…あ、ソンフンさん」
帰りの電車に乗っていたら少し離れた場所から貴公子がこちらにやって来る。
「この路線使ってたんだ？」
「引越ししたんです、次の駅の近くに」
「え、そうだったんだ。知らなかった…」
私のTMIにソンフンさんは何だか落ち込んだ様子を見せる。
「僕はその隣の駅に住んでるんですけど」
「そうだったんだ」
「それも知らない…」
いや言われてないから分からないし！
「じゃあご近所さんですね！」
「そうか…」
慌てて笑顔でそう言えば、ソンフンさんは窓の外のをじっと見つめた。
「これからこうやって電車で偶然会うことあるかもですね」
「あのさ」
「え、え？」
急に手を握られて固まった。
すると固まったままの私を引っ張って、自分の方に寄せる。
ソンフンさんは私を引き寄せると私の身体を背中に回した。
「ごめん急に」
「え？」
私が背中越しに彼を見上げると、ソンフンさんは眉間に皺を寄せていた。
「…………」
その前には男の人が狼狽えている様子で対峙している。
「おい、お前。今この子を撮ってただろ」
「えっ」
すると目の前の男は手元にあったスマホをサッとポケットにしまう。
「ソンス、ソンス駅です」
周りの乗客の視線が一気に私達に集まる。
「ソンス支線に乗り換えられる方はお降りくださいますようお願い申し上げます」
すると男は背後の扉へ向かってダッシュする。
「待てって」
「ああ…」
電車の外に飛び出した男をソンフンさんが追いかけて、私はその場でまた固まった。
するとすぐ隣に居た乗客のおじさんが私の腕を叩いた。
「いや学生さんも追いかけないと」
「あ、そっか」
おじさんの言葉にハッとして私も急いで電車のドアから外に出る。
背中で扉の閉まる音がして、ギリギリセーフ。
「いやセーフじゃなくてアウトだわ」
ソンフンさんが走っていった方向に向かって私も走った。
駅の中で人を掻き分けて探してみるけど彼の姿は見えない。
どこ行ったんだろ…
「Aさんっ」
その声に振り返ると息切れして苦しいのか、膝に手をついて立ち止まっているソンフンさんを見つけた。
「ソンフンさん」
「ごめん…逃げられた…」
私は彼の腕を掴んですぐ近くのベンチに座らせる。
「ありがとうございます」
「いや、でも…捕まえられなかったし…」
「でも私、全然気づけなかったから」
彼の隣に座って頭を下げる。
「良かった、ソンフンさんが居てくれて」
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eng(プロフ) - 依鈴さん» わーありがとうございます！嬉しい！更新もっとがんばります^ ^ (3月3日 3時) (
レス) id: c7224089dc (このIDを非表示/違反報告)
依鈴(プロフ) - すごく面白いです！！毎日更新楽しみにチェックしてます！笑 頑張ってください！ (3月3日 2時) (レス) id: 71a1970ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eng | 作成日時：2024年2月25日 8時
