イン・ザ・タクシー ページ5
タクシーを捕まえると私はスーツケースをトランクに入れてもらえる様に運転手さんに頼む。
運転手さんは優しそうなおじさんでニコニコしながら私のスーツケースを受け取るとトランクに軽々と詰めてくれた。
「どこまで行く？」
「あ、龍山に行きたいんです。食堂があって」
そう言いながらスマホで地図を見せようとすると運転手のおじさんはハッとした顔で運転席から後ろを振り返った。
「もしかしてヨンサン食堂？」
「えっ、何で」
「人気のお店だからね。観光客はあんまり来ないけど、お嬢さんは韓国人でしょ」
「あ…ま、はい」
苦笑いしながら私はスマホをポケットにしまう。
おじさんはシートベルトを閉めると車を発車させた。
「凄いね、韓国語めちゃくちゃ出来るんだ」
「一応…家では韓国語メインだったしね」
「凄いなー僕なんてまだゆっくりとしか喋れない」
そう言うと力くんは座席に深く座ってため息をついた。
「勉強中なの？」
「うん…いちおう塾？みたいなとこには行ってるけど、会話になるとイマイチで」
「へー頑張ってんだ」
私が他人事の様に答えると力くんは私をじーっと見つめてくる。
なんだか嫌な予感が…
「教えて」
「え、塾行ってるじゃん」
「会話の相手になってよ」
「…………」
こういう時にひとりっ子ってどうしたらいいのか分からなくなる。
兄弟がいない分、誰かの面倒を見るのがイマイチ苦手だ。
「お願いお願いお願い」
「…暇な時で元気で眠くない時なら」
「うん！ありがとう」
私の遠回しな言い方にも屈せず力くんは嬉しそうに笑った。
あーなるほどこういうタイプなのか…
無邪気な少年というか、年相応の素直な男の子って感じだ。
「日本人なんだね、韓国語上手だけど」
私たちの会話を聞いていた運転席のおじさんが話しかけてくる。
「ホラ、韓国語で説明して」
「えっ、僕？」
うんうんと頷いて力くんの腕を軽く叩く。
戸惑いながらも彼は少しずつ単語を繋ぎながらおじさんに説明を始めた。
隣で黙って聞いていたけど私が思ってたよりも全然会話はできている。
「なるほどね、まだ若いのに2人とも。頑張ってるね」
「はい！」
自分の説明が問題なく通じたのが嬉しかったのか、力くんは何故か私に向かって返事をした。
何だかその嬉しそうな顔が可愛くて思わず笑顔になってしまう。
「おじさんに会話相手になってもらったら」
「それはない」
なんとなく西村力という子が分かってきたような気がした。
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eng(プロフ) - 依鈴さん» わーありがとうございます！嬉しい！更新もっとがんばります^ ^ (3月3日 3時) (
レス) id: c7224089dc (このIDを非表示/違反報告)
依鈴(プロフ) - すごく面白いです！！毎日更新楽しみにチェックしてます！笑 頑張ってください！ (3月3日 2時) (レス) id: 71a1970ec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eng | 作成日時：2024年2月25日 8時
