*。あの夕立が止む前に。*Satoshi.O (ページ20)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:11,115 hit

20 ページ20

.
「だから、」

そう言いかけたAの言葉を遮って

「いい。それ以上は...わかってたから。
...Aの気持ちが変わんないこと。」

少し涙が滲みそうになるのを堪えながら言った。
Aって呼ぶのも、きっとこれが最後だ。

「まあ悲しいけど、俺がAのこと好きなくらいAがまっちゃんのこと好きなのは見てればわかるし、だからこそ俺じゃ駄目なのも痛いほどわかるよ。だから、俺のことなら大丈夫。頑張ってちゃんと伝えてきな」

もちろん言っていて苦しかったけれど、それは本心だった。
好きだからこそ、相手の気持ちが変わらないのもわかる。

俺のその言葉に、Aは大粒の涙を流した。

「っ...ごめん、ありがとう...」

「ほら、泣くなって」

俺はその涙を拭ってあげられないけれど、

「Aは笑顔が一番似合うよ」

言葉で元気にしてあげることならできるはずだから。

「ありがとう...本当に、ありがとう」

手で涙を拭いながら、Aがそう言った。
その泣き笑いは、今まで見たAの中でも一番綺麗だった。
.

「応援してるよ、ハッシー」

呼び方を、いつものハッシーに戻した。
それは俺なりの切り替えだった。
そして、Aに手を振って俺は一人でブランコに残った。
.

涙は流れてきたけれど、思ったよりも悲しくない自分がいた。
それはきっと、俺がAのこともまっちゃんのことも大好きだからだ。
.

「まっちゃんも頑張れ」

.
そう呟きながら、俺はブランコから降りて公園を出た。

.