エンドオブストーリー

〇25__まるでドラマ ページ25

あわよくば、またヨンジュンの隣に。
そんな淡い期待は呆気なく砕かれた。


窓際で密やかに談笑する二人が、とても煌びやかだ。
まるでドラマの主人公とヒロイン。

ヨンジュンとセウンは廊下側の列で前後に座っている。
新学期と同じ座席列から私だけがあぶれた。


そして、そんな私は中央に位置した群衆の中ぽつんと佇んでいる。


早く期末試験が終わって夏休みに入ればいい。
すぐにこんな座席、ごちゃまぜになってしまえばいい。


席替えのことや二人のことに思いを巡らせていると、気づけば授業は終わっていた。


「A〜早く行こうよー」


ジャージの入った可愛らしい袋を提げたセウンが足踏みをしている。

体育前の休み時間は忙しない。
更衣室へ移動、着替える、体育館まで移動。
これを十分間で終わらせるのは意外とハードで、一分一秒が勝負なのだ。



カゴからビブスを取り出したセウンが「爪割れるからバスケ嫌なのよねー」と溜め息をついた。

「私も汗かきたくない」と同意しつつ、授業自体には感謝していた。

二人の距離が物理的に離れるのは正直ありがたい。
どうにも醜い動機に、自分でも目を瞑りたくなる。


コートサイドに座り込んだセウンと短い別れの挨拶を交わして、仕方なく走り出す。


夏場は体育を休止するべきだ。
ドリブルをするクラスメイトを追いかけながら、滴る汗を拭う。


呆気なくゴールを決められたところでふと視線を移すと、ハーフパンツから伸びる白くすらりとした脚を折りたたんで、つまらなそうに毛先を弄るセウンが目に入る。


お喋りで自己主張の強い性格が全面に出ているからか、セウンが目を引く程の美少女であることを忘れている時が多々ある。


ヨンジュンとセウンを頭に思い浮かべると、その隣に突っ立っている自分がとても滑稽に思えた。



はぁ、本当に夏場の体育は良くない。
と振り出しに戻ると、突然左頬に衝撃が走りその場に倒れ込んだ。


「大丈夫！？」


コート内で汗を流していた子たちが慌てて駆け寄ってくる。


「口元、切れてる」


そう言われて唇の端がじんじんと痛むことに気がつき、顔面にボールが直撃したことを時間差で悟った。


「よそ……っ、」


"よそ見してた"なんて言い訳は散り、裂けるような痛みが走り思わず口元を押さえた。


「先生！私、保健室連れて行きます！」


そう言って「立てる？」と手を差し伸べてくれたのはセウンだった。


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