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〇49__逃げようとしている ページ49

「わかりましたって」


テヒョン君はファイルを掴んでそのまま押し下げた。
呆気なく後退するプラスチックが定位置へ戻る。

今度こそ杜撰に仕舞われたファイルの恰好を正していると、テヒョン君が机の上に置いていた鞄を掴んで立ち上がった。


「早く帰ってレポートに取り掛かって下さい」


すたすたと帰路につこうとする彼に遅れまいと椅子を戻して歩き出したと同時に、第三者の発声が室内にツンと響き渡った。


「あんた達、付き合ってんの?」


以前と何も変わらない、堂々とした、しっかりと縁取られたセウンの声。
少しの懐かしさと同じくらいの寂しさが心を覆う。


「いえ」


凛とした声が即座に返答した。
もう、私が迷う隙も無かった。


「あ、そう」


テヒョン君の一声ですんなり事実を受け入れたセウンが頬杖をついて目を落とした。
ヨンジュンの様子をちらりと確認すると、同様にして俯いている。


表情を変えないテヒョン君は、セウンの納得を確認して再び歩みを進める。

「帰る前に寄り道してもいいですか?ポストイットが切れそうで」


まるで何も無かったかのように。
明らかに凍りついていた空気を溶かすように、テヒョン君は平然とそう言った。


「あ、うん。私もルーズリーフ買いたい」


テヒョン君のトーンと同じようにした。
逃げようとしている、そう自覚した。


そんな私を逃さない人。



「いいね、気楽で」



無表情でそう言い放ったセウン。

再び空気が滞留した。
重苦しくて、息ができないような。

ガタッと音を立てたセウンは、荒々しい手つきでノートやペンケースを鞄に放るとそのまま教室を出て行ってしまった。


「待って、」


慌てて後を追いかけようとするとテヒョン君に腕を掴まれる。
離してよ、そんな意思を込めて振り返ると、テヒョン君が静かに首を横に振った。


「多分、Aさんが行っても逆効果です」


「でも追いかけないと」


「追いかけてどうするんですか?」


「それは…、」


わからなかった。
セウンに追いついてその手を掴んで、私は何を言えばいいのだろうか。
抽象的な言葉を選んだところで、きっと掘り下げられる。
何が、何を、どうして、って。セウンはそういう子だ。


_

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am(プロフ) - ノアさん» ノア様 嬉しいお言葉をありがとうございます。丁度構想を練っている時分にコメント通知を受け取ったので、創作意欲が湧きました♡これからも涙腺を刺激するようなテヒョン君を書けるよう頑張ります⋆⸜ ⚘ ⸝⋆ (2021年10月8日 23時) (レス) @page48 id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 文章が天才的すぎます!!泣 テヒョンペンなので今泣きながら見てます笑 更新楽しみにしてます!!^^* (2021年10月8日 21時) (レス) @page46 id: f00cf6f10c (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - ミミさん» ミミ様 早速のレスポンスありがとうございます!晴天の霹靂と言ったところでしょうか。ヨンジュン、最近黙ってばかりだなぁと心配しながら執筆しております🥲 (2021年9月28日 3時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - am様、二度目のメッセージを投稿します。今ほど更新された話を読んだところですが、いやぁ、こうきたか!って感じです。主人公ちゃんに気持ちを寄せてしまっています。主人公ちゃんが頭の良さが文章の描写から伝わってきますね。ああ、続きどうなるんだろう。 (2021年9月27日 16時) (レス) id: 877c5b508b (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - aaaoooさん» aaaooo様 素敵なお言葉をありがとうございます。伝えたい🐿さんが届いているようで嬉しいです!もっと読みたい、そう思ってもらえる作品を綴っていくのでよろしくお願い致します♡ (2021年9月27日 16時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:am | 作成日時:2021年8月22日 14時

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