〇13__いちごミルク ページ13
「少し休憩しませんか?」
電子辞書を閉じたテヒョン君がそう提案した。
「する、糖分欲しい」
強く同意し、鞄から財布を取り出したテヒョン君に続いて席を立つ。
試験を目前に控える私たちは、毎日のように図書室で顔を合わせていた。
互いの主目的が自習であるから特別話し込んだりするわけではなく、ただ共に時間を共有している。そんな放課後だった。
「ヨンジュンさん、よく連絡くれるんです」
蒸し暑い廊下を歩きながら伸びをしたテヒョン君が目尻を下げる。
長い腕が天井に掲げられる。
「へえ、知らなかった」
ヨンジュンから、そんな交流は耳にしていなかったかので少し驚く。
「Aさんと違ってよくしてくれます」
「勉学の師は今のところ、私だけだと思うよ?」
心外な比較に不貞腐れるとテヒョン君は「冗談ですよ」と笑い宥める。
テヒョン君の印象はコロコロ変わる。
実はよく笑う、実はスポーツも得意、友達が多い、そして冗談もよく言う。
とても楽しい後輩。
「僕、どれを選ぶと思いますか?」
自販機の前に到着したテヒョン君は長い両腕で大きな直方体を抱きながら尋ねる。
「当てたら何かもらえる?」
「肩たたき券を発行します」
「いらない」
笑って拒否すると、「強欲ですね」とテヒョン君が呟く。
自販機から一歩引いて隣に並んだテヒョン君をじっと見つめながら、しっくり来るドリンクを探す。
ブラックの缶コーヒーに目星をつけた。
年不相応な落ち着きにはこれがぴったりだ。
けれども。
労働した脳が糖分を欲している自分の状況を照らし合わせて、おそらくテヒョン君も同じことを考えているだろうと推察する。
「決めた、カフェオレだ」
白と茶色のレトロなパックを指差した。
「残念。これです」
したり顔で細長い指がプッシュしたのはいちごミルクだった。
そんなかわいいものを飲むなんて、あまりにも想定外。
「じゃあ次は僕の番ですね」
口を半開きにしたテヒョン君がドリンクの列をじっくりと見て回る。
おそらくこれは彼の癖、最近よく見る。
そんなテヒョン君の回答を待っていると、「お前たちも休憩?」と後ろから声がした。
振り向くと、肩にタオルをかけたヨンジュンが右手を上げた。
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am(プロフ) - ノアさん» ノア様 嬉しいお言葉をありがとうございます。丁度構想を練っている時分にコメント通知を受け取ったので、創作意欲が湧きました♡これからも涙腺を刺激するようなテヒョン君を書けるよう頑張ります⋆⸜ ⚘ ⸝⋆ (2021年10月8日 23時) (レス) @page48 id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 文章が天才的すぎます!!泣 テヒョンペンなので今泣きながら見てます笑 更新楽しみにしてます!!^^* (2021年10月8日 21時) (レス) @page46 id: f00cf6f10c (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - ミミさん» ミミ様 早速のレスポンスありがとうございます!晴天の霹靂と言ったところでしょうか。ヨンジュン、最近黙ってばかりだなぁと心配しながら執筆しております🥲 (2021年9月28日 3時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
ミミ(プロフ) - am様、二度目のメッセージを投稿します。今ほど更新された話を読んだところですが、いやぁ、こうきたか!って感じです。主人公ちゃんに気持ちを寄せてしまっています。主人公ちゃんが頭の良さが文章の描写から伝わってきますね。ああ、続きどうなるんだろう。 (2021年9月27日 16時) (レス) id: 877c5b508b (このIDを非表示/違反報告)
am(プロフ) - aaaoooさん» aaaooo様 素敵なお言葉をありがとうございます。伝えたい🐿さんが届いているようで嬉しいです!もっと読みたい、そう思ってもらえる作品を綴っていくのでよろしくお願い致します♡ (2021年9月27日 16時) (レス) id: ee43218214 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:am | 作成日時:2021年8月22日 14時