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帰宅して早々、母親に六法全書の購入を頼んだ。母親は訝しげにミツリを見遣った。当然だ、ただの学生が求めるようなものではないし、決して安い代物ではない。
「法律家に、……判事になりたいんだ。善悪の基準に従って国を守るひとに……秩序を守るひとに、なりたいんだ」
自分の主張。自分の意見。また否定されるだろうかと、無意識に心の痛みを覚悟する。けれど、母親は否定しなかった。初めて、ミツリの言葉に失望しなかった。褒められはしなかったけれど、それはミツリにとって大きな自信になった。法律は正しい、法律に従事することは正しい。そう信じ込むきっかけだった。
六法全書の全暗記。公開されている過去の事例の暗記。一般教養の暗記。全て、全て頭に詰め込んだ。形振り構わず、裁判官になるのに必要になるであろう全てを。
大学は法学部がある公立の名門校に進んだ。母親から法科大学院に通う許可は下りなかった為、大学在学中――三年生の時に司法試験予備試験を受験し、合格。その後、四年生で司法試験に合格し、大学卒業後司法修習生となった。一年間の修習の後、二回試験に合格し、晴れて判事補となった。
■過去 - 終末の日
その日は日差しが嫌になるくらい晴れていた。
前日に裁判をひとつ終え、久し振りの休暇だったので、実家に帰ろうとしていた。同僚や先輩に労われ、被害者家族には……まあ些か厳しい言葉を掛けられ。被告人家族には頭を下げられたり罵倒されたり。けれど問題は無い。自分は法に従って人を裁いた。法こそが正しいのだから、自分も正しい。自分の思考は、行動は、何一つ間違っていない。
だから、きっと。お母さんも、俺を褒めてくれるだろう。こんなにも、正しいことをしてきたのだから。きっと、お母さんも。
そうして、アスファルトを革靴で叩いて歩く、その最中。一瞬、ほんの一瞬、視界の隅に金色が映った。それが奇妙で足を止めたことが功を奏したのだろう。ミツリの眼前に、轟音とアスファルトの破片を伴って何かが突き刺さった。ちかちかするほどに眩しいそれは、光の矢、或いは光の槍とでも表現すべき何かで。
悲鳴が聞こえた。どこかから。いや、そこら中から。悲鳴の上がらない場所は無かった。あるとしても、悲鳴を上げる間もなく命が落っこちただけだった。
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元素(プロフ) - CS提出ありがとうございます……重い……重いよう……つらいよ……なんで……？ 不備等ありませんのでこのまま受理させていただきます！幸せになってくれよ…… 今後も当企画をよろしくお願いいたします！ (2022年6月16日 21時) (
レス) @page14 id: 656d2fa00c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アカツキ | 作成日時：2022年6月15日 22時
