“日常” ページ3
ガラリ、と扉を開ける。
すると同時に、ばしゃり、と音がする。
目を開けて見てみると、青いポリバケツを向けた黒い学ランの男子生徒が立っていた。
「また学校来たのかよ」
そんな罵声を気にも止めず、持ってきていたスポーツタオルで水を拭く。
「……無視してんじゃねぇよ!!」
先程の男子生徒とは違った生徒が怒鳴りつける。
どうせ答えようが答えまいが、有りもしない話を信じ込んで理不尽で馬鹿な持論を展開する。
それならば答えない方が面倒では無いだろう。そう結論付けると顔色も変えず席につく。
「あ、綾舘さん、無視は良くないよ……!!」
元凶が何をほざくか。
ふと、そんな罵倒が思いついた。
余りの白々しい演技に、つい笑いそうになるが堪える。
「そうだぞ綾舘。さっさと愛架ちゃんに謝れ!!」
「愛架ちゃん大丈夫か？怖かったよな。頑張ったな。」
「マジでこんな優しくて可愛い子に手ぇ上げるとか女の嫉妬怖すぎwww」
「しかもそれで謝らないとか腐ってるよなwww」
火をつけたように男子生徒達が喋り出す。
真相を知ったらこいつらはどんな顔をするだろうか。
どんな言葉を吐くだろうか。
どんな態度をするだろうか。
疑問が頭を埋め尽くしかけた。
だが、どうでもいい話だ。
なんと言おうが、どう思おうが個人の勝手なのだから。
つい先程見つけたジュース塗れになった体操服を洗うために外を出ようとすると、
顔を歪める程ではなかったが、先程部活の面々にやられたのもあって少々傷んだ。
そんな私を見て、恐らく体操服の首謀者である女子のグループは悔しそうに顔を歪めた。
それが余りに醜かった為に、外に出てから口の端が少し上がった。
これが、少し前から始まった、世間一般では「異常」とされる私の「日常」である。
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作者名：狐花@リコリス | 作成日時：2017年9月28日 1時
