□a mement mori / 傭兵 ページ5
「あぁ、なんと嘆かわしい事でしょうか」
ぽろぽろ、透明な雫が床を這いつくばる傭兵に降りかかる。
ハンターは十字架を模した短剣の刃を握り、自身の手が切れている事にも気が付かず熱心に祈りを捧げている。
かつては純白であったであろうローブは酸化した赤色の飛沫で汚れ、裾は引きずりすぎたのかボロボロだ。
すでに起死回生を吐いた傭兵はこの状況からの脱出方法を考えるのを早々に諦めていた。どうしたって、このハンターから逃げるすべはないのだ。
「貴方は一体何人の人を殺めたのでしょう。一体その手でどれだけの命を刈り取ったのでしょう。一体どれほどの偽りの称賛を受けたのでしょう」
「くっ、ぁ……アンタ、私情たっぷりで俺だけを、狙ったな……!」
「私情?いいえ、まさか、天啓に従って行動したまでです。全ては神の御示し通り」
「っは」
睫毛を濡らし赤色の瞳を潤ませた彼女がにっこりと微笑む。
それを鼻で笑った傭兵は仲間の一人が助けようと近くまで来ている事を知ると"早く逃げて!"と定型文を送った。彼の失血死はもうすぐだ。
「俺、アンタみたいな信者が一番嫌いだ」
「私も、真善美に背いた生き方をしている貴方が苦手です」
下から睨みつける傭兵。一度だけ、軍に属していた時に見たことがあった。くだらない神を信仰し神の為ならと自分の子供を人柱に捧げてしまう狂信者を。とても気分のいいものではなかった。
ぽた、とまた彼女の涙が落ちる。悲しみで泣いているのではない。哀れみで泣いているのだ。目の前の畜生のように這いつくばる、神はいないと言わんばかりの反抗心を見せる愚者を。
ああ、なんて救いようのない相手なんだろう。
「しかし、そんな貴方にも神は救いの手を差し伸べてくれています。ほら、ほらお迎えが来ていますよ」
「ぁ"…ぅ、はぁ"、迎え…?」
「えぇ、さぁ私の手を取って」
「やめ、ろ」
寒い、寒い。自分が作り出した血溜まりすらも自分を殺そうとしている。
可哀そうな程冷たく震える傭兵の手を無理やりとったハンターは、彼の意識が絶える瞬間におぞましく美しい笑みを浮かべた。
「死を忘れる事なかれ」
あぁ、忘れるもんか。お前みたいなハンターを。いつか、覚えてろ。
□ 傭兵 が 真善美 にいいねしました
□ 真善美 が 傭兵 にいいねしました
□■□■
殺意から始まる恋のA to Z (性癖大爆発)
最期のいいねは宣戦布告。こうして二人はお互いに執着していくんやで
□ないものねだり / 探鉱者→←□押しかけモグラ / 探鉱者
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yuki maki(プロフ) - Twitterフォロー失礼しまーす (2022年5月1日 17時) (レス) id: 6c4d3fd2ca (このIDを非表示/違反報告)
名無してゃん - 人外シリーズ待ってましたっ!ほんとに楽しみにしてたので嬉しいです(´˘`*)ありがとうございます(´˘`*) (2020年12月23日 18時) (レス) id: 256c8decd9 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - ハルさん» 閲覧、コメントありがとうございます。私の他にも同じ感性(?)性癖(?)の人がいて嬉しいです(´ω`*)尊いとまで言って頂けて…!嬉しみの極みでございます…!こちらこそありがとうございます…! (2020年2月18日 1時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 人外シリーズ好きです。尊いです。有難う御座います。 (2020年2月12日 13時) (レス) id: ca92ab3e55 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 黒いロシア帽さん» 閲覧、コメントありがとうございます〜。つまり禿げですね(((そう言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります! (2020年2月3日 15時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年11月17日 22時