□こうして未来は / リッパー ページ24
荘園が閉鎖される事になった。詳しい事情は知らないが、大方荘園主の秘密かゲームの実態が世間に露呈したのだろう。それが一番納得できる理由付けだった。
ゲームで協力し、仲間と言っても過言ではない彼らはナイチンゲールさんからの指示に従い、部屋で荷造りをしているみたいだ。
突拍子もなく荘園に現れた私に荷物なんてあるわけがなく、宛てもなく館を歩く。
談話室ではナワーブとこんな事をして暇を潰したとか、医務室ではエミリーに怒られたとか、食堂ではあの料理がおいしかったとか。
最終的に落ち着いたのは中庭のガゼボ。腰かけながら柄にもなく懐古していれば、ポツ、と雨が一粒地面に落ちた。それを皮切りに土砂降りに。これでは館までのちょっとの道でも濡れ鼠になってしまう。
はぁ、と憂鬱に溜息を吐けば不意に肩に重みが加わった。
「っ、あ、」
「こんにちは、A」
ビックリして勢いよく振り向けば、そこにはジャックがいた。
どうしてここに、と顔に出ていたのか彼は軽く笑うと話した。
「ハンターは元より荷物など無いんですよ。ハスターやイドーラを見ていれば分かるでしょう?」
まぁ趣味が物集めだった人は処分に追われている様ですが。
そう言って私の隣に腰を下ろすと今度は貴女の番だと言いたげに私を見詰める。それこそ、分かり切っているだろうに。彼の右手を握ったりしながら、ぽつぽつと口を開く。
「ナイチンゲールさんから荷物を纏めろって言われたんだけど、ほら、私って身一つでここに来たから、まとめる程の荷物が無くってさ。短い間でもたくさんの良い思い出が出来たここを見て回ってたの」
「そうなんですか。では、私と同じですね」
「ジャックも?」
「はい。ああいや、感傷に浸るとかではなく、一時の暇潰しにしては予想以上に楽しめたものだな、と思いまして」
それは感傷と言っても違わないのでは?しかしそれを口に出すなんて野暮な事はしない。彼は少しズレたところがあるけど、それがいいのだから。
ザアザアと雨の音が、景色を縦に切る雨粒が、ガゼボに二人きりという状況を意識させる。今まで散々二人きりの時間を過ごしてきたが、この空間ももう最後が近い、もしくは今日が最後なのかもしれないと考えると胸が痛む。
ジャックなりに当たり障りない話題を選んでくれているのだろうが、その平穏さが余計に刺さった。
□■□■
まだ第五人格を好きでいますか。
私は少し頻度が減りました。ランクマ勝てんし。
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yuki maki(プロフ) - Twitterフォロー失礼しまーす (2022年5月1日 17時) (レス) id: 6c4d3fd2ca (このIDを非表示/違反報告)
名無してゃん - 人外シリーズ待ってましたっ!ほんとに楽しみにしてたので嬉しいです(´˘`*)ありがとうございます(´˘`*) (2020年12月23日 18時) (レス) id: 256c8decd9 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - ハルさん» 閲覧、コメントありがとうございます。私の他にも同じ感性(?)性癖(?)の人がいて嬉しいです(´ω`*)尊いとまで言って頂けて…!嬉しみの極みでございます…!こちらこそありがとうございます…! (2020年2月18日 1時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 人外シリーズ好きです。尊いです。有難う御座います。 (2020年2月12日 13時) (レス) id: ca92ab3e55 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 黒いロシア帽さん» 閲覧、コメントありがとうございます〜。つまり禿げですね(((そう言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります! (2020年2月3日 15時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年11月17日 22時