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『何、なんでA泣いてるの?』
『今日のゲームで、ってあんさんが一番知っとるやろ』
『あぁ、アレか』


あまり聞き取れない、聞くつもりのない言葉が二人の間で交わされる。知らない知らない、私は今日のがお酒で昇華できればいいんだ。

ナワーブの持ってきたお酒を飲み、美智子が作ってくれたおつまみを食べる。

……至福。欠伸をして、机に伏せるのもいいが折角隣に人がいるのだ。そ、とゆっくりナワーブに寄りかかる。

ぱち、とナワーブが瞬く。あら、と美智子が口元に手を添えた。


『な、おいA?』
「眠いの?部屋まで送ろか?」
「んーん、ふたりと、いっしょにいたい…」
「可愛いなぁ、でも傭兵はんと距離が近いのはあかんよ、私に寄りかかってええから、こっちにおいで」
「んー…」
『あ、こいつマジで寝始めた』


美智子がとんでもなく嬉しい事を言ってくれた気がするが、眠気でそれどころではない。談話室のソファはふかふかしていて気持ちがいい。それにナワーブの、人の温もりに妙に安心してしまって、空間の心地よさにそっと目を閉じた。眠るつもりは無いが、瞼はどうしても重たく開いていられなかった。


コツ、と誰かの靴音が聞こえる。美智子とナワーブが誰かに向かって挨拶をして、それから冷たい視線が私に注がれる。私に?いや、これは、ナワーブに?

何かを言われたらしいナワーブが鼻で笑いながら言い返す。弱くなった頭では内容は理解不可能だった。


『自分は散々他の女を抱えておいて、恋人が他の男と距離が近いのは許せないのか?』
『それについては後で謝罪しますよ。Aさんの嫉妬した顔はとても愛らしかった』
『ゲェ、そういう事かよ……大体予想はついてたけど』
『A泣いとったよ』
『……それは、予想外でした。うんと甘やかしてあげないと』
『ええ、そうしたって』
『では、失礼します』


そっと背中と膝裏に手が差し込まれて持ち上げられる。大好きなジャック香りが鼻腔を蕩かし、彼の香りにすり寄った。


『Aさん、起きてます?』
「ん、じゃっく、?」
『はい、私ですよ』
「……きらい、ばか、あっちいけ」


当然日本語の雑言は理解されず、背後で聞いていた美智子が笑うばかりだった。

談話室は暖炉があったから暖かく、廊下に出れば少し冷えた空気が肌を刺す。少し眠気は覚めてしまったが脳が飛ばした理性を取り戻す事は無く、少しだけ涙が滲みだす。


「こうやって、ヘレナもウィラもだっこして、」

/→←□戦略的誤算 / リッパー



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yuki maki(プロフ) - Twitterフォロー失礼しまーす (2022年5月1日 17時) (レス) id: 6c4d3fd2ca (このIDを非表示/違反報告)
名無してゃん - 人外シリーズ待ってましたっ!ほんとに楽しみにしてたので嬉しいです(´˘`*)ありがとうございます(´˘`*) (2020年12月23日 18時) (レス) id: 256c8decd9 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - ハルさん» 閲覧、コメントありがとうございます。私の他にも同じ感性(?)性癖(?)の人がいて嬉しいです(´ω`*)尊いとまで言って頂けて…!嬉しみの極みでございます…!こちらこそありがとうございます…! (2020年2月18日 1時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 人外シリーズ好きです。尊いです。有難う御座います。 (2020年2月12日 13時) (レス) id: ca92ab3e55 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 黒いロシア帽さん» 閲覧、コメントありがとうございます〜。つまり禿げですね(((そう言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります! (2020年2月3日 15時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年11月17日 22時

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