【第五人格】愛に溺れんとして【短編集】

□戦略的誤算 / リッパー ページ18

諸行無常より

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クラクラする頭。自然と滲む涙でぼやけた視界では何も輪郭がはっきりしていない。


「うぅぅ、美智子ぉ、もう嫌だよぉ、薔薇杖折ってやりたいよぉ……」
「んもう、飲みすぎよA。折るのは賛成やけど、今は水でも飲んでや」
「ウィラやヘレナを抱っこして…本当は私なんて好きじゃないんだ…」
「私ならリッパーはんに抱っこされるなんてお断りやけどね」


クスクス笑う美智子。酒で上気した頬は妖美さが増し、微笑まれたらそこらの男は瞬時に惚れてしまうだろう。

グイ、と酒杯を煽り喉が強いアルコールで熱くなる。いつもならもっと度数の低いものを飲むのに、今日に限って強いものを飲んでいるのには理由があった。いや、さっきの会話でご察しだとは思うが。

今日のゲームで、恋人のジャックが優鬼をしたのだ。青薔薇の杖を腰に携えて。

いや、優鬼自体はいい。私もチェイスや救助をしなくて済むし、彼もスタンで傷付かなくて済むのだから。問題は恋人の私を一回も抱く事なくゲームを終わらせた事である。

真っ先に私の元へ来て優鬼アピールをしてくれたのは良かった。だが、合流したヘレナを通電まで抱き続け、通電後にはウィラを抱き、その後投降したのだ。

この！恋人の！！私を！！！抱かずに！！！！

ちなみにもう一人抱かれていない人がいるけど名前はナワーブと言うから論外だ。ジャックは滅多に男を抱かない。あの傭兵ともなれば尚更だ。

今でも思い出すジャックが投降する直前のナワーブの、お前恋人だよな？喧嘩したのか？という疑いの目。いつもなら私を一番抱いてくれるのに、浮気か愛が冷めたのか。疑いたいのはこちらの方だった。

グルグル、グルグル。二人を抱く彼の姿がずっと浮かんでいる。



「う…もうだっこさせてあげないもん」
「ふふ、可愛いなぁ。そんなに嫉妬してもうたん？」
「しっと…じゃない、ない、ない」
「……そろそろお開きに、」

『よぉ、二人で酒盛りか？混ぜてくれよ』
「んぁ、なわーぶ！」
『傭兵はん』


ゴツ、と酒瓶を私の目の前に置き、背後からぬっと私を覗き込むナワーブ。顔の距離が近く彼の長い前髪がおでこを掠めて、くすぐったさに思わず、ふふ、と笑ってしまう。

私の隣の席を指差して『いいか？』と聞いてくるから、勿論と頷いた。

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