□朝食を共に / リッパー ページ17
諸行無常より
□■□■
『Aさん』
「ん、ジャックぅ……?」
『おはようございます。昨晩は無理をさせてしまって…体は大丈夫ですか?』
「んー、"おはよう"。えっと、"大丈夫だよ"。気にしないで」
カーテンが開けられ、朝日が差し込む部屋の中。そっと頬を撫でられ意識を浮上させれば、リッパーがベッドに腰かけこちらを見下ろしていた。
私を撫でる手とは反対の手でコーヒーの入ったコップを持っている彼はいつもより緩い恰好をしていて、不覚にも胸がときめいた。
それにしても、私もだいぶ英語が上達したのではないのだろうか。最初は何を言われても分からない英語のリスニングが大の苦手だった私が今ではかろうじて会話が出来ているのだから。
まぁ、それもこのジャックのおかげなのだが。
『朝食はどうします?ここで食べて行くか、向こうで食べるか』
「朝ご飯は……"ここで食べるよ"」
ジャックと一緒に居たいし。と日本語で零しても彼が反応する事はない。当然だろう、ジャックは日本語が分からないのだから。
彼に限らずこの荘園に居るサバイバー達は大体が英語圏かその他の言語圏の出身であり、唯一日本語で話せるのは美智子だけだ。
そっと起き上がり、自分がちゃんと服を着ている事にビックリしつつジャックに感謝する。きっと私が疲れて寝てしまった後、処理を済ませて着せてくれたのだろう。
「わ、美味しそう…!」
『さぁ座って。食べきれなければ残していただいて結構ですからね』
「あ、あー…?とりあえず、いただきます」
「イタダキマス」
「ん、good!」
『ありがとう』
少し片言だが、順調に上手くなっているいただきますにサムズアップをして褒める。嬉しそうに目を細めたジャックは『そちらは?』と温かい湯気を上げている味噌汁を指差した。
最近、和食の作り方を美智子に教えてもらっているらしい。
らしい、と言うのは私は実際にその光景を見ている訳ではなくナワーブから聞いたものだからだ。
女性と二人きりと聞くと嫉妬してしまうが相手が美智子となれば話は違う。なんと言ったって美智子だからね!
味噌汁を飲み、その温かさにホッと息をついて『とっても美味しい』と告げれば『それは良かった』と微笑んだ。
ゲームも何もかも忘れてしまうくらい充実した穏やかな朝。腰の痛みすらも甘受してしまっていた。
□■□■
意思疎通がままならないまま始まる恋とか最高に最高だった。
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yuki maki(プロフ) - Twitterフォロー失礼しまーす (2022年5月1日 17時) (レス) id: 6c4d3fd2ca (このIDを非表示/違反報告)
名無してゃん - 人外シリーズ待ってましたっ!ほんとに楽しみにしてたので嬉しいです(´˘`*)ありがとうございます(´˘`*) (2020年12月23日 18時) (レス) id: 256c8decd9 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - ハルさん» 閲覧、コメントありがとうございます。私の他にも同じ感性(?)性癖(?)の人がいて嬉しいです(´ω`*)尊いとまで言って頂けて…!嬉しみの極みでございます…!こちらこそありがとうございます…! (2020年2月18日 1時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 人外シリーズ好きです。尊いです。有難う御座います。 (2020年2月12日 13時) (レス) id: ca92ab3e55 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 黒いロシア帽さん» 閲覧、コメントありがとうございます〜。つまり禿げですね(((そう言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります! (2020年2月3日 15時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年11月17日 22時