□夢か現か / 庭+医+芸 ページ15
諸行無常より転載
□■□■
目覚めたら、見知らぬ土地にいた。
いや冗談とか小説の導入部分ではなく、今現在進行形で私が体験している現象である。
目の前のフェンスゲートの向こう側から、可愛い麦わら帽子と綺麗なナース帽が近づいてくる。
『こんにちは!』
「は?え?なんて?」
『あらあら、外国の方かしら?聞いた事の無い…いえ、確か美智子がたまに零す言語に似ているわ』
「みちこ?」
『どうするの?私達の言葉が通じないなら、荘園の説明もできないの』
『とりあえず、ゲートを開けましょうか』
『分かったの!』
聞きなれない言葉。かすかに聞き取れた「みちこ」という言葉に日本人の名前を連想するが、正解は分からずに、ゲートが開けられるのをぼうっと眺めていた。
『さぁ、入って』
「うん?あ、入れと。はい」
『すごい!通じたなの!』
『ジェスチャーは万国共通ね』
「あ、合ってたんだ」
ナース帽に手招きをされ、従って敷地に足を踏み入れればサムズアップされる。よかった、合ってたみたいだ。
更に手招きをされ、歩き出してしまう二人に慌ててついていく。自分から入っておいてなんだが、これ取って食われたりしないだろうか?
『私、美智子さんを呼んでくるの。彼女ならお話できるかもしれないから』
『えぇ、頼んだわエマ』
また、「みちこ」だ。この館の主だろうか?人名だとしたら、随分和風な名前だ。日本人かな。
大きな部屋に通される。棚には高級そうな皿が飾られていたり、長机にテーブルクロスがかけられているのを見ると、食堂だろうか。椅子の数から察するにこの館には多くの人がいるらしい。
ナース帽が椅子を指し示す。そこに座れと、はい。分かりました。
自分の手を見詰めたり毛先を弄ったり、食堂を見渡したりしていればキィ、と少し古びた音を立てて扉が開く。
奥からは着物を着た黒髪の綺麗な女性が。隣に立っている麦わら帽子よりも随分身長の高い彼女は、私に向かってお淑やかに微笑んだ。
「こんにちは、新人はん」
「こ、こんにちは。えぇっと、みちこ、さん?」
「あら、知ってはったん。そうそう、私は美智子。あんさんは?」
「私は、Aです」
「A、よろしゅうなぁ」
「よろしくお願いします」
ほっと、安堵の息を吐いた。よかった、話しが通じる人がいた。
いくら
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yuki maki(プロフ) - Twitterフォロー失礼しまーす (2022年5月1日 17時) (レス) id: 6c4d3fd2ca (このIDを非表示/違反報告)
名無してゃん - 人外シリーズ待ってましたっ!ほんとに楽しみにしてたので嬉しいです(´˘`*)ありがとうございます(´˘`*) (2020年12月23日 18時) (レス) id: 256c8decd9 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - ハルさん» 閲覧、コメントありがとうございます。私の他にも同じ感性(?)性癖(?)の人がいて嬉しいです(´ω`*)尊いとまで言って頂けて…!嬉しみの極みでございます…!こちらこそありがとうございます…! (2020年2月18日 1時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 人外シリーズ好きです。尊いです。有難う御座います。 (2020年2月12日 13時) (レス) id: ca92ab3e55 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 黒いロシア帽さん» 閲覧、コメントありがとうございます〜。つまり禿げですね(((そう言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります! (2020年2月3日 15時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年11月17日 22時