【第五人格】愛に溺れんとして【短編集】

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ビックリして顔を上げると、彼が腰を曲げてするりと頬を撫でてきた。


「大人しく、していてくださいね」


そのままどこかへ歩き消える必安。あ、え、これって、どういう…？優鬼、ではない…のか…？

取り合えず自己回復を進めていればカヴィンさんから『解読中止、助けに行く！』と送られてきた。頼もしい…即死でごめんなさい…。罪悪感で危うく『私を助けなくていい！』と彼の気持ちを無碍にしてしまうところだった。危ない危ない。


「ぁ、カヴィ、さ」
「A！遅くなってすまない」
「大丈夫、です。すぐにダウンしてしまって、ごめんなさい」
「いいんだ、気にするな」


楽しくやろう、と言ってくれた直後ぴゅん、と目の前に傘が飛んでくる。そして現れたのは無咎で、ぎりぎりまで治療してくれていたカヴィンさんのお陰でなんとか立つ事は出来たがこんな至近距離ではすぐにダウンしてしまうのも予想の範囲内だろう。


「大人しくしてろと言われただろう、手間を掛けさせるな」


カヴィンさんがそのまま無咎とのチェイスに入り、ここから離れた場所に移動していった。

…彼は、何がしたいのだろうか。多分絶対優鬼ではない。だってカヴィンさんを本気で追いかけていったから。ならば…あぁ、失血死させたがりか。久々のゲームだというのに、彼の気紛れには困ったものだ。

新たに落とされた監視者で回復を遅いながらもしていれば、ウィラがそっと助けに来てくれる。


「あ、ウィラ、」
「災難ね」
「あは、は……」


ウィラも彼の思惑を察したようで、死んだ目で見られる。苦笑いしか返せなかった。

そして、案の定傘で飛んでくるハンター。私の失血死までのカウントダウンは半分を切っていて、温存しておきたかった起死回生を使わずにはいられない状況となっていく。

近くでチェイスしているウィラと必安の動きを確認しつつ、タイミングを見計らって立ち上がればやはり彼は標的を私に変え、追いかけてきた。即死する未来しか見えない。


「A！」
「カヴィンさん！」


急に視界が変わり、気付いたときにはカヴィンさんの肩に担がれていて。

彼に身を任せるのは安心するものの、体勢的にハンターを見るしかない私には彼、必安の"不愉快極まりない"という表情が見えて心臓はバックバクだ。

この後、必安はダウンさせたカヴィンさんに目を向けることもなく私を追いかけ、失血死する様を見届けた。

……結局、彼は私がカヴィンに抱えられるのを見たくなかっただけ、らしい。

□質疑応答 / 写真家→←□非可逆的 / 白黒無常

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