【第五人格】愛に溺れんとして【短編集】

□佛ですか / 黒無常 ページ2

改めて無咎の恰好を見て、はわわ、と思わず手で口を覆う。

先日お披露目された『レクイエム』の衣装でゲームに参加した無常を前に、逃げるでもなく解読するでもなく、ただ立ち尽くした。


「解読しないのか？」
「待って…かっこよ過ぎて直視できない」
「しっかりと目は合ってるぞ」
「焼き付けないと、勿体ないじゃん」


面倒だなぁ、と言いたげな視線が寄こされる。今日は索敵が上手くいかなかったらしく、私が暗号機を半分程解読したところでのお出ましだった。

寒気と心音がするからその場から遠ざかりながら振り向いてみると無咎がその場に立ち止まっていて。

遠くに行くのを止めて、そろり、そろりと近づいて落書きを彼の前に落としてみれば隣に傘の落書きが落とされた。優しくしてくれる気分らしい。

無咎が暗号機の前に立って、戯れに傘で叩いている。しかし特質は異常ではないようで、ぽこん、とゲームには不似合いな軽快な音と共に跳ね返されていた。


「おい、本当に、解読しないのか？」
「えー、うー、あー、するぅ」
「いい子だ」
「あううぅう」


そっと解読を再開すると、目の前の壁に彼の落書きが貼られる。無咎の鈴を元に描かれた可愛らしい落書き。解読の片手間に、鈴の落書きのすぐ横に自分の落書きを貼った。

手元が狂って調整を失敗しそうになるが、なんとか成功させ一台をあげる。気紛れにダイスを振りながら待っていた無咎がパッと顔をあげた。


「終わったか、残りは二台……さっさと済ませよう」
「この後何か急ぎの用事？」
「なんだ、俺のこの姿はじっくり見たくないのか？」
「ｯ〜〜〜！！見る、見たい！」
「あぁ、だからさっさと解読に集中しろ」
「うん！」


まさかハンターから『解読に集中して！』と言われるとは。

デレデレとだらしのない顔をしていたからだろうか、鈴を鳴らされた。


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レクイエム入手祝いに。

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